止まんじゃねーよ!
アホか!
携帯に向かい僕は言った。
「走らないで僕の後ろのドアから出ろ」
一度で通じた。
顔を引き攣らせて中華ソバは僕の横を摺り抜け外に出た。
僕は吹き出しそうになった。
なぜか人の必死な顔を見ると可笑しくてしょうがない。
列の中に少し入り込んでいた僕は、2、3歩後ろに下がり店員達が居る方を見た。
店員は一人しか居なかった。
残った店員が、中華ソバに気付いたのであろう、僕の横の出口に小走りで向かって来る。
コイツの顔も笑えた。
必死やん!
その店員が僕の横を摺り抜けようとした時、僕は彼の腕を掴んだ。
「トイレどこ!?」
そう言いながら。
慌てた店員は腕を振り放そうとしながら言った。
「ちょっと待って下さい!」
「待てねぇよ!漏れるがな!」
店員は怒った顔で僕を睨む。
笑わすなっての…
手を離したら店員は直ぐに外へと向かった。
遅えよ…
もう走ってるだろ…
案の定、店員は外から直ぐに戻って来た。
ホールへ戻った店員は、頭に血がノボッているのであろう…
直前に腕を掴んで、追跡を邪魔した僕を素通りした。
僕の事を見向きもしない。
同じような状況を何度か経験したが、いつも店員達の対応は同じであった。
決して熱くなってはいけないのだ。
冷静で在れば見える物まで、熱くなれば見えなくなってしまう。
偶然に邪魔する奴など居る筈がない。
彼らのような人達が、頭に血をノボらせ、犯罪者を無理に追い掛けて、刺されたりするのだと僕は思う。
逃げているからと言って相手が弱いと勘違いしてはいけない。
逃げている奴が開き直ったら、死ぬ気になると言う事を忘れない方が良い。
それはゴト師を相手にする時に限らない。
全ての犯罪者逮捕に付いてである。
どんな状況になっても勝てる…
その時のみ、逮捕に行くべきである。
当然、殺し合いになっても勝てなければいけない。
力無き正義は、無力に等しいように僕は思う…
逆に害ですらある。
外から戻った店員が、事務所の中へ入って行った事を確認して、この先の事を考えた。
コメント