早よ行けや!
僕は良夫ちゃんを、店員から見えないように、目で殺す積もりで睨んだ。
いかん…
冷静にならなきゃ…
良夫ちゃんはヒルんでいる。
僕は顎で、ドウゾと言う意思を良夫ちゃんに伝えた。
婆さんと僕を抜いて、良夫ちゃんは両替を終えた。
続いて僕と婆さん。
こうして両替自体は疑われる事なく、3人とも無事に終わった。
店員の優しきナイスガイは、僕と婆さんに、何度も丁寧に謝罪と、お礼を言った。
僕は両替を終えて直ぐに店から出る事なくトイレに向かった。
直ぐに外に出て良夫ちゃんに会ったのでは怒鳴り付けてしまう。
冷静になる時間が欲しかった。
頭に血がノボれば判断が狂う事は経験で知っている。
表に見せる部分は、どんなに興奮していても構わないが、中身は冷静でなければいけない。
氷よりも冷たく。
でなければドジる。
自分をコントロール出来る、強い精神力が欲しかった。
少し経つと血が冷えた。
中華ソバの事を思い出した。
あ…
見なきゃ…
トイレを出て先程見えなかった計量機の一つに向かう。
二つの計量機の内、こちらがゴトをするなら楽だろうと思っていた。
離れた位置から計量機が見える所まで来た。
この時、携帯のバイブが震えていたが、ツルッパが喫茶店に着いた事を知らせる電話だと思い無視した。
歩きながら計量機の方を見ると、計量機の横に中華ソバが居た。
僕の所からは横顔が見える。
セカンドバックを、両手で腹の前に、不自然な形で持っていた。
中華ソバを視界に捉えたのは2、3秒である。
しかし僕には何をしているかが何と無く想像出来た。
電波を計量機に当てている…
僕は立ち止まらずに、そのまま店を出た。
充分である。
リュウに、電波で計量機を操作してレシートを作る道具探しをさせる。
これだけ分かっていれば道具屋も隠す事は無いと思った。
情報をハッキリ知られていれば、隠さずに、仲間に入れて口止めするのが常識であった。
後に知る…
電波ゴトと思い込んだ僕の判断は誤りであった。
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