良夫ちゃんに守って貰おうなど、やはり考えが甘かった。
作戦は恐ろしい結末を向かえる。
僕がレシートを出すタイミングで、良夫ちゃんが携帯に話し掛ける事にしていた。
そこは先程と同じである。
しかし今回は店員に渡す金額が低い。
前回女性店員に掛けたようなプレッシャーは必要ない。
軽く慌てさせて急がせるだけで良い。
両替が続く以上、良夫ちゃんが目立つのも良くないのである。
方法は、良夫ちゃんに、店に入る前に説明してある。
「僕がレシートを男に渡すタイミング辺りで、携帯に【すぐ行きます!すぐ行きます!今カウンター前にいます!】って、軽く男に聞こえるように言えば良いから。分かった?」
「分かりました」
そう言った…
良夫ちゃんは、間違いなく、分かりましたと言ったんだ…
僕は、復唱させずに信じてしまった…
普段なら、こんな失敗はしなかった。
考える事が多過ぎて僕は少し疲れていた。
そしてカウンターの前に立った。
僕はレシートを胸ポケットから取り出した。
そのタイミングで良夫ちゃんが声を挙げた。
「産まれるのか!?」
良夫ちゃんの声の大きさに僕も店員もビクッとした。
誰がやねん!
振り返って怒鳴り付けたい衝動に駆られた。
グッとコラえる。
更に過剰な演技は続く。
「パパはどうしたんだ! 向かってるのか!?」
何のドラマだ…
頼むからやめてくれ…
僕はレシートをソッと店員に渡した。
受け取った店員は、全く僕を見ていない。
おもいっきり良夫ちゃんを見ている。
手も止まっている…
良夫ちゃんの過剰な演技は最後の一言で締めククられた。
「それじゃ死んじゃうじゃないか!すぐ行くから待ってろ!」
店員は優しい男であった。
突然僕に謝った。
「すいません!あの方先に両替させてあげて良いですか?」
「どうぞ…」
他に何と言えたであろうか…
婆さんにも男は聞いた。
「どうぞ…」
なぜか良夫ちゃんは、僕と婆さんを抜く事になった。
抜く事がマズイと思ったのであろう。
良夫ちゃんの挙動が怪しい。
抜く事を遠慮したりしている…
コメント
良夫ちゃんまた余計なことを笑
緊張感のある中でこういったアドリブはまずいですよね。大好きなシーンです。
良夫ちゃんにはいつも度肝を抜かされますね。