変造カードにしても、ギンパラの電波道具にしても、捕まり掛けた奴からは、力関係が余程上で無ければ、お金は取りづらい。
本人の余程のドジか、目の届かない所でやっていた場合は別である。
目の届く所で、危険を知りながら突っ込んで行って捕まり掛けた奴には、図々しい僕でもお金の請求は中々出来ない。
そう言う物なのである。
ましてや冷し中華は損をする訳では無い。
余計なレシート作りをした中華ソバが無駄な危険を犯しただけである。
僕と冷し中華の力関係は、この時僕の方が上であった。
冷し中華の仲間から変造カードを僕は仕入れている。
普通それは、カードを売らないと言われたら僕の立場を押し下げる。
カードを売って貰えなければカードゴトが出来ないからである。
しかし僕が毎日仕入れる変造カードの量は、そのレベルを越えている。
他で仕入れるぞ、の一言で立場は簡単に逆転する。
変造カードで捕まる人間が増えて工場の売上が下がった事を理由に値上げを言われた事がある。
その時に、他で…と言った。
カードの値段は据え置きになった。
皆が苦しめられるカード屋に、この時僕は勝っていた。
言ってしまえば、カードの受け渡しなどをやらされている冷し中華など、吹けば飛ぶような存在であった。
僕が冷し中華を気に入らないから他でカードを仕入れると工場に言えば、冷し中華は間違いなく酷い目に遭う。
でも僕はそんな事はしない。
聞き分けが悪いと、少し脅しに使うだけである。
レシートを余らせた事で僕が責任を取る事など間違っても無いのである。
少しすると中華ソバが一人で歩いて来た。
手にはセカンドバックを持っている。
冷し中華は来ないようだ。
「なんだ?一人か?」
少しビビり気味に中華ソバは答えた。
「うん… 一人でやれるから」
ドジる奴の典型に見えた。
「見張りやってやろうか?なんかあったら助けてやるぞ」
レシートの作り方を見たかった。
「いや… 作り方見せるなって言われてるから」
しまった…
余計な事を言った事で、見るなと釘を刺されてしまった。
やはり新しいゴトだと思った。
この道具を仕入れて、最初から僕が全てをやれば、稼ぎは変造カードを間違いなく越える。
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