換金しないで戻るのを忘れたのであろう。
それとも、お金がすぐに見たくなったのか…
多分後者だ…
良夫ちゃんは僕の言う事などサラっと流す天才である。
困ったオッサンだ…
疲れるわ…
振り返ると良夫ちゃんが見えた。
右手を挙げたりして僕に笑い掛けたりしている…
笑うな…
ケツ蹴るぞ!!
良夫ちゃんより先に車に戻った。
残る3人の手下を両替に行かせる段取りをする。
その後でツルッパに、もう一回両替に行かせようと思っていた。
すぐに良夫ちゃんが戻り車のスライド式の後部扉を開いた。
僕と目が合った良夫ちゃんは、信じられない事を言った。
「レシート下さい。20万円分」
車の中がイッキに凍り付く。
誰も言葉を発しない。
僕はどんな顔をしたであろうか…
記憶がトんでいる。
きっとバケモノを見た時と同じ顔をした。
数秒後、我に返った僕は良夫ちゃんをコンビニの皆から見えない横手へと誘った。
「良夫ちゃん駄目だよ。一人で全部やらせる訳に行かないよ。良夫ちゃんは取り分5割だけど、アイツら3割なんだからさ。少しはやらしてやらないと稼げねえじゃん」
良夫ちゃんは、言われて気付いた顔をした。
「まあ、アイツら最後の方にはビビるから、レシートは余るよ。足りなければ作らせるし… それから二人で行こう。それで良いだろ?」
「なら100万ぐらい成りますか?」
100万って…
無理でしょ?
普通に…?
後半が危険な事に気付いていないのか?
この時僕は、僕が貧乏クジを引く予感に包まれた。
良夫ちゃんを助けに入って、取り押さえられている自分が見えた。
勘弁してくれ…
面倒臭いので笑ってごまかした。
車に戻った僕は、生き残る為に出来る事は、全てやって措こうと決めた。
車の中では良夫ちゃんに煽られた手下達にも火がついている。
良夫ちゃんに全て食われると皆が信じ始めていた。
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