僕は半ば観念してカウンターの方に体を向けた。
慌てた感じの女性店員が、手下の景品を袋に入れている所であった。
手下と僕のレシートの玉数は常識の範囲である。
僕も問題なく両替出来た。
女性店員の顔を、近づいてからは見なかったので、彼女が僕をどう思ったのかは分からない。
景品を僕の手に渡して彼女は言った。
「お待たせしてすいません」
「いや…」
それだけ言って僕はカウンターを離れた。
絶対顔覚えられた…
終わった…
そう思いながら。
すぐにカウンターから見えない列に紛れ込んで店の外に出た。
頭の中では、僕自身が両替をしづらくなって、いくらの損害になるかを計算していた。
ザッと計算すると結構な金額になった事に気付いてヘコんだ。
道路の先を見ると、手下が景品の入ったビニール袋を軽く振りながらコンビニ方面に歩いている。
良夫ちゃんは既に見えない。
パチンコ屋から見えない位置で僕は手下に追い付いた。
後ろから声を掛ける。
「おい、カウンターの奴、良夫ちゃんのレシートじっくり見てた?見てないだろ?」
「全然見てないよ。なんか大分慌ててたよ。俺の事も全然見なかったし」
そうか…
「僕の事は?」
「めちゃくちゃ見てたよ!」
めちゃくちゃかよ〜
死んだ…
泣きそうになる。
良夫ちゃんを店の前で大きな声で呼び止めるのが正解だった…
一度渡したレシートを引っ込める。
しかし、それをすれば周りに僕がビビッたと思われる。
それは僕の中で何より許されない事であった。
あの時、良夫ちゃんを呼び止める大きな声は出なかった。
失敗は、20万のレシートを、良夫ちゃんに煽られて、渡した僕の判断にある…
このゴトを潰さないで済んだ事に満足するしか無かった。
まあ良いや…
手下達から抜けるし…
「良夫ちゃんは?」
当然コンビニに先に向かっていると思っていたが聞いた。
「換金所の方に行ったよ」
え?
なんで?
すぐに気付いた。
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