20万円分は数枚のレシートに分かれているとは言え、いくら何でも多い…
店側は〇国人達の来店で一度は警戒したのである。
何か可笑しいと思ったが〇国人達が店から居なくなった事で警戒を解いただけである。
そこへ高額の換金…
微妙に有り得ない金額…
頭の中で警報が鳴る。
回れ…
ポンコツ頭!
店員を慌てさせる方法…
注意を他にソらす方法…
一つ思い付いた。
5万円分のレシートを、二枚選んで持ち、手下の一人を連れて良夫ちゃんを追い掛けた。
あのボケ老人に関わると、いつもこうだ!
ちくしょー!
良夫ちゃんが見えた。
あと少しで店に入る。
手下に一枚レシートを走りながら渡した。
「僕の後ろに付いて来な!」
それだけ言った。
良夫ちゃんが店に入る。
大きな声を出せば良夫ちゃんを止める事は出来た。
しかし僕は止めなかった。
良夫ちゃんに続いて店に手下と入る。
良夫ちゃんは、混み合った店の通路を、積んでいる箱を避けながらヨタヨタとカウンターに向かっている。
すぐに追い付いた。
背中を叩く。
振り向いた良夫ちゃんに僕は笑いながら言った。
「僕達の事は気にしないで普通に両替して…」
後ろに突然現れた僕に良夫ちゃんは驚いた顔をした。
「前向きなよ」
頷いた良夫ちゃんは、そのままカウンターへ向かう。
手下に言った。
「僕の前に入って普通に両替して」
「はい…」
僕はポケットから携帯を取り出して耳にあてた。
良夫ちゃんがカウンター前に着いた。
後ろに手下が付ける。
その後ろに僕が付けた。
良夫ちゃんがレシートを女性の店員に渡したと同時に僕は携帯に大きな声で話し掛けた。
「すぐ行く!すぐ行く!!今カウンター前に並んでんだよ!なんか混んでんだよ!」
チラリと僕を見た女性店員をキツく一瞬睨んだ。
慌てろ…
良夫ちゃんのレシートに集中するな…
そう願いながら。
すぐに女性店員から目を逸らした。
顔を覚えられたら僕が換金出来なくなる。
カウンターに背中を向けた。
更に携帯に喋り掛けた。
「あと5分ぐらいで行くよ!なんかモタモタやってんだよ!」
それきり僕は黙った。
結果はどうであれ、ここからは自分の気配を消さなければならない。
携帯をポケットに仕舞った。
良夫ちゃんが、景品を入れた袋を持って、僕の横を通り過ぎた。
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