「取り分は両替した金額の三割だから、やればやっただけ金になる。後半、キツくなったら割数は少し考える… ノルマは決めないけど、余り少なかったら二度とソイツは、このゴトでは使わない。様子によっては完全にクビにする。それともう一つ… 良夫ちゃんが居るって事も忘れんな。もたもたしてたら全部食われるぞ… さっきも300百万全部やったら90万くれるのかって言ってたし…」
皆が顔を見合わせて言う。
「無理だろ…」
「有り得ねぇよ…」
「どうやってやるんだよ…」
一人が言った。
「でも、あの人、店員に張り付かれて100回…」
僕が言った。
「有り得る… 常識が通じない… 婆さんも居るし」
四人は想像したと思う。
両手いっぱいに景品を抱えて笑う二人の姿を。
なぜなら、煽った僕が、想像してしまったからである…
レシート作らそうか…
まだ250万以上レシートが残っているのに僕はそう思った。
無理、無理!
冷静にならなければいけない…
いくらなんでも無理であろう。
少しすると婆さんと良夫ちゃんが戻って来た。
良夫ちゃんの手には15万円分の景品が入ったビニール袋が握られていた。
僕はすぐに聞いた。
「大丈夫だった?」
「平気よ」
そう婆さんが答えた。
アテにはならん…
良夫ちゃんが手を出して言う。
「25万分レシート下さい」
全員固まった。
みんな呆然としている。
一番先に立ち直ったのは僕だ。
手下達より少し免疫があった。
「多いだろ…」
単純に多いと思ったのもあるが、良夫ちゃんと婆さんがいくらやっても僕の儲けは無い。
冷し中華から受けた、そのままの割数が二人の取り分なのである。
僕にすれば割数の低い手下達に多目にやって貰いたい…
良夫ちゃんにも婆さんと同じ15万程を、やらせる積もりだった。
その辺が持ち込む金額の限界だと思っていた。
しかし頭の中の計算が25万と言われた事で狂った。
つい言った。
「20万ぐらいが限界じゃない?」
良夫ちゃんは渋々頷いた。
玉数を計算して20万円分のレシートを渡す。
「行ってきます」
そう言ってパチンコ屋へと向かう良夫ちゃんの顔には全く恐怖が見えない。
僕はボンヤリと良夫ちゃんの後ろ姿を見ていた。
しかし直ぐに目覚めた。
失敗した!!
20万は間違いなく多い!
まだ2時半だ!
僕の抜けた頭がフル回転し始めた。
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