僕の周りに人が集まり始めると色々なゴトの話しが舞い込み始めた。
犯罪を厭わない者達は居るようで余り居ない。
人数が必要なゴトがある時などは人を集めるのに苦労するようであった。
危険なゴトなら当然であろうが、安全なゴトでも道端で人を募集したりする訳には行かない。
それが僕に声を掛ければ即座にそのゴトに対応出来る人間を集める事が出来た。
ゴトの世界は広いようで狭い。
必ずなにがしかの人の繋がりの上に存在している。
手下の技量を、ほぼ正確に掴んでいた僕が送り込む奴らは、どんな現場でもドジる事がほとんど無かった。
それが人の繋がりに乗って噂として広がると更に仕事が舞い込むようになった。
仕事を振ってくる奴らはまちまちである。
道具屋や、カードの工場絡みや、ゴトをしている最中に僕や手下達が知り合った奴ら等である。
雪ちゃんやリュウからも頼まれる事があった。
取り分の交渉は全て僕がした。
安く使われるのは嫌いである。
僕は中々しぶとい。
取れると思えば遠慮は一切しない。
いや…
取れない部分にも食いついた…
その部分が僕の取り分になった。
ある日の昼頃電話が鳴った。
僕はゴトに向かう途中であった。
相手は、カードの受け渡しに雪ちゃんが来られない時に来るカタコトの〇国人である。
「すぐに人集めてヨ」
カタコト怠い…
何故人を集めるのかを先に言え…
僕はこの当時酷い勘違いをしていた。
〇国人は皆カタコトだから全員馬鹿だと本気で思っていた。
少し考えれば、そんな訳は無い…
二カ国語を喋る段階で僕よりは優秀である。
しかしソコに全く思いが到らなかった。
全員が三割引きで馬鹿に見えた。
鳥肌が立つセリフを口にするリュウなどは最初は完全な馬鹿だと思っていた。
しかしこれは悪い事ばかりでは無かった。
〇国人と交渉する時など、馬鹿だと思っているので頭から呑んで掛かる。
僕の妙な強気に彼らは怯む事が多かったように思う。
そりゃそうだ…
〇国人が自分に優位に話しを進めようとしても、馬鹿が何言ってやがる とまず思う。
すかさず僕は彼らの意見など全否定する。
馬鹿は僕の鴨に為ってボヤボヤしてろと思う。
交渉の入口は必ず僕が主導権を握った。
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