電波ゴト44 〜相棒〜

これから起こる事は、ほぼ予想出来ている。

たとえ予想が狂っても、僕だけは逃げ切ってやる…

それを思うと楽しくて仕方ない。

ウジムシに言った。

「カードはサンドに入れっぱなしで良いから、店員に、何見てんだって吠えながら突っ掛かれ。カードを見られなきゃ、捕まりゃしねえから。その間にカードは僕が処理するよ」

ウジムシは意味が分からないのかビックリした顔をしている。

「捕まるのはカード持ってる僕だけだよ。はよ行けや!あんなクソ店員にゴネるぐらい出来んだろが!」

そう言いながらウジムシを強く押した。

挙動不審丸出しで、意味も分からずウジムシは店員の方へ歩き出す。

店員達が身構えるのが見えた。

手でも出して捕まっちまえ…

笑ってやるから…

そんな事を考えながら僕は自分の台とウジムシの台の、カード返却ボタンを押した。

両方の台のサンドから、変造カードが返却された。

店員達はウジムシの動きにとまどい、一瞬僕がカードを抜いた対応に遅れた。

僕の手の中には、台から飛び出た二枚の変造カードが握られている。

僕は勝ちを確信した。

胸のポケットから、一本の爪楊枝を取り出して、何度も練習した細工をカードにほどこした。

ウジムシは三人の店員に取り巻かれ抵抗している。

残りの二人の店員が一歩遅れて僕に殺到した。

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僕を捕まえようと、必死な顔になって目の前まで来た店員に、ウジムシの方を指差し笑いながら聞いた。

「おい、あいつ何やったんだ?」

逃げるそぶりを見せない僕に、店員は戸惑っているように見えた。

それでもやはり店員は言って来た。

「今抜いたカード見せて下さい!!」

「は?なんで?」

「良いから見せろ!!」

そう言って横に立っていた店員が僕の腕を掴んだ。

「痛えな… お前、僕の腕を掴んだ事を忘れんなよ。必ず痛い目に遭わせるからな…」

そう言ってサンドから抜いた二枚のカードを、もう一人の店員に渡した。

既にウジムシは三人の店員に取り押さえられている。

しかしカードは、既に普通のカードに変わっている。

変造カードは、普通のお客さんが使い終わった本物のカードを使って、パンチ穴を塞いで作る。

その塞いであったパンチ穴を全て爪楊枝で抜いた。

普通の使い済みカードに早変わりしている。

本物のカードと変造カードを見分けるのは、パンチ穴が埋めてあるか無いかの違いだけである。

証拠は既に無い。

しかしコレだけでは、カメラの録画があるので逮捕される事は無いが、しつこくされる。

ウザい…

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