これから起こる事は、ほぼ予想出来ている。
たとえ予想が狂っても、僕だけは逃げ切ってやる…
それを思うと楽しくて仕方ない。
ウジムシに言った。
「カードはサンドに入れっぱなしで良いから、店員に、何見てんだって吠えながら突っ掛かれ。カードを見られなきゃ、捕まりゃしねえから。その間にカードは僕が処理するよ」
ウジムシは意味が分からないのかビックリした顔をしている。
「捕まるのはカード持ってる僕だけだよ。はよ行けや!あんなクソ店員にゴネるぐらい出来んだろが!」
そう言いながらウジムシを強く押した。
挙動不審丸出しで、意味も分からずウジムシは店員の方へ歩き出す。
店員達が身構えるのが見えた。
手でも出して捕まっちまえ…
笑ってやるから…
そんな事を考えながら僕は自分の台とウジムシの台の、カード返却ボタンを押した。
両方の台のサンドから、変造カードが返却された。
店員達はウジムシの動きにとまどい、一瞬僕がカードを抜いた対応に遅れた。
僕の手の中には、台から飛び出た二枚の変造カードが握られている。
僕は勝ちを確信した。
胸のポケットから、一本の爪楊枝を取り出して、何度も練習した細工をカードにほどこした。
ウジムシは三人の店員に取り巻かれ抵抗している。
残りの二人の店員が一歩遅れて僕に殺到した。
僕を捕まえようと、必死な顔になって目の前まで来た店員に、ウジムシの方を指差し笑いながら聞いた。
「おい、あいつ何やったんだ?」
逃げるそぶりを見せない僕に、店員は戸惑っているように見えた。
それでもやはり店員は言って来た。
「今抜いたカード見せて下さい!!」
「は?なんで?」
「良いから見せろ!!」
そう言って横に立っていた店員が僕の腕を掴んだ。
「痛えな… お前、僕の腕を掴んだ事を忘れんなよ。必ず痛い目に遭わせるからな…」
そう言ってサンドから抜いた二枚のカードを、もう一人の店員に渡した。
既にウジムシは三人の店員に取り押さえられている。
しかしカードは、既に普通のカードに変わっている。
変造カードは、普通のお客さんが使い終わった本物のカードを使って、パンチ穴を塞いで作る。
その塞いであったパンチ穴を全て爪楊枝で抜いた。
普通の使い済みカードに早変わりしている。
本物のカードと変造カードを見分けるのは、パンチ穴が埋めてあるか無いかの違いだけである。
証拠は既に無い。
しかしコレだけでは、カメラの録画があるので逮捕される事は無いが、しつこくされる。
ウザい…
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