ウジムシは、さすがにゴキブリの舎弟であった。
完全なヘタレである。
まるで小鹿の産まれたてのように震えている。
怒るよりも笑いが止まらなくなった。
手足が震えている等と言う生易しい物では無い。
全身が震えている。
それまでにも、震える奴は何人も見て来たが、ウジムシの震え方は異常であった。
面白いので横の席に座りずっと見ていた。
ウジムシはカードを一枚使う度に席を立とうとする。
その度に脅かした。
「どこ行くんだよ。良いから座ってやってろよ。捕まりそうになったら店員ぶっ飛ばして逃げりゃ良いんだからよ。5、6人ぶっ飛ばしゃ逃げ切れるから平気だろ」
そう言って僕は笑う。
変造カードも良夫ちゃんのマネをして、下皿の中にまとめて置いてある。
はっきり言ってコレは僕もチビッた…
良夫ちゃんのプッツンぶりを改めて感じた。
ウジムシは、そのカードを気にして、更に動きが可笑しくなっていた。
5万円分のカードを使う頃には、店中の店員の注意が僕とウジムシに注がれていた。
潰しても構わない店だったので僕は気にしなかった。
来るなら来い…
お前ら全員ビビらせてやる…
僕のテンションは上がり切っていた。
源次は僕達とは離れた席で打っていた。
何があっても巻き添えにはしないで済みそうである。
僕には計算があった。
何も無しで、ここまで店員を挑発するのは自殺行為である。
これまでにも完全に店側にバレた時には何度か使っている手口がある。
変造カードゴト師を捕まえる為には、サンドからカードを抜いて、変造カードの使用を確認しなければ為らない。
それを出来なくすれば良いだけである。
それには逆切れが1番早い。
この頃僕は、ギンパラの電波ゴトをしていたので、カードゴトなど笑う程楽だと感じていた。
確実に自分は成長している…
店員など、気合い一つで飲み込んでやる…
僕は手下の逮捕などが重なりイラついていた。
こんな奴らに捕まりやがって…
全てのパチンコ屋が怒りの対象になっていた。
少しすると店員が明らかに僕達を捕まえる体制に入った。
通路の両側に店員が一人づつ張り付いている。
逃走を防ぐ役割であろう。
この後、何人かの店員で僕達を押し包むつもりである。
ウジムシが言う。
「やべぇだろ!?」
「は?当たり前だろ。見て分かんねえのか?お前がプルプル震えてるせいだかんな。捕まりたく無かったら気合い入れて僕の言った通り動け。分かったか?」
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