鴨だな…
良いか…?
「ヘタレだったら即効クビだよ」
そう僕はゴキブリに言った。
この時のチンケな欲が僕を高みへと運ぶ結果になった。
その青タンは、感情をなくしたように暗い顔をしていた。
名前は【源次】とする。
年が40代後半で、独身の何も持たない男である。
いや…
借金は持っていた。
髪型が昔の人がするシチサン分けで、真面目なサラリーマンに見えた。
着ている服は、仕立の良さそうなスーツだが、少しヨレた感じである。
こいつ、ゴキブリ達に脅かされてんのか…
すぐそう感じる程ゴキブリ達とは人種が違うように見えた。
ゴキブリを二人から離した所に引っ張って行き聞いた。
「なんだよ、あのオッサン」
「何でもないよ。俺達に借金があるからゴトやらせて返させたいんだよ」
カチンと来た。
「お前、なめてんのか?僕をそんな事に絡めんじゃねえよ」
「いや、絶対迷惑掛けないから… カード代も先に払わせるし、万一捕まっても責任とか言わないし…」
「当たり前だろが!つうか無理矢理やらせんだろ!?」
ゴキブリは違うと言った。
いくつかのやれそうな仕事を源次に紹介した所、源次自身が変造カードゴトが良いと言ったと言う。
しかし無理矢理感は否めない。
駄目だ…
やらせない…
揉め事のタネになる…
「無理だな。連れて帰れ」
そう僕はゴキブリに言った。
それでもしつこくゴキブリは頼んで来る。
それを少し離れた所で見ていた源次が僕に近づいて来た。
「すいません… これ以外で借金が返せそうにないんで是非やらせて下さい」
そう言って源次は頭を下げた。
いくらの借金が有るのかは知らなかったが、確かに稼げる額は普通の仕事よりも多い。
手下の中にも借金からの脱出に成功した奴らは沢山いた。
あいつらと同じか…
少しやらせて見るか…
自分で言って来る以上、やらせない理由は無い。
ヘタレなら直ぐに切る事に決めて了承した。
見張りで付くと言う舎弟の見た目は、完全にヤクザであった。
「あいつは多分見た目ですぐ捕まるよ。僕は一切責任は取らない。3、4日一緒に廻って出来るようならカードだけ卸すから二人で適当な店を探してやるんだな。それで良いか?」
ゴキブリはそれで良いと言った。
こうして源次とウジムシを連れて三人でホール廻りをする事になった。
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