電波ゴト40

その後、一号の家族と連絡を取る事は一度も無かった。

いや…

家族だけでは無い。

一号とも直接は連絡を取っていない。

彼は刑務所での生活態度が良かったのであろう…

2年5ヶ月の刑の所を、2年で出所した。

模範囚であれば、おおよそ刑期の3分の2を過ぎた所で、仮釈放の審査の対象になる事が出来る。

それにより一号は二年で仮釈放になった。

その頃も、変わらずに僕はゴト師であった。

既に変造カードは終わっている。

人を間に挟んで、一号は僕に会いたいと言って来た。

ゴト師に戻りたいと言う。

僕は間の人間に伝言を頼んだ。

「僕に怨みがあるならいつでも会う。そうで無いなら二度と僕の周りに現れるな。お前のようにドジで根性無しには用が無い。待っていてくれた嫁や子供を大切にして、真面目に働け」

彼を思いやって言った言葉では無い。

僕の本心であった。

その頃のゴトは、ドジがすぐ逮捕に繋がっていた。

手の縮んだ奴の、巻き添えは、お断りである。

僕の伝言を聞いて、彼が何を思ったのかは知らない。

その後、彼が僕の周りに現れる事は、一度も無かった。

何をして暮らしているのかも当然知らない。

一号と同時期に捕まった手下も警察へと連行された。

彼もまた捕まる時に多少の抵抗はしている。

しかし傷害事件には到らない程度である。

なぜか彼は、警察署での取り調べが終了した後に、すぐ釈放になった。

逮捕から3時間ほど後のことである。

何が一号と彼とでは違っていたのかは、分からなかった。

ツキだけではなかっただろうか。

彼らの逮捕により僕は懲りた。

手下が捕まった場合の対策案を、いくつか用意する事にした。

それらの対策案は、現代の組織犯罪にも適用出来る物なので書く訳にいかない…

その対策案により手下が捕まっても僕が動く事は無くなった。

手下も捕まった場合の少しの安心が買えるようになった。

その対策案の中で一つだけ…

弁護士は、辞め検と言われる検事を辞めて弁護士になった優秀な弁護士を見つける事が出来た。

検察側へのコネクションを持っている…

その弁護士は、この世に犯罪をハビコらせる為に存在するような奴であった。

顔は能面のように感情を表さず喋れば怜悧と言う言葉がピッタリ嵌まる奴である。

大嫌いな奴ではあったが助かる手下は多かった…

コイツの世話にはなりたくない…

能面ヅラを見る度、僕はそう思った。

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