逮捕されてから約二ヶ月経って判決の日を向かえた。
拘置所は面会出来たが、僕達の中から面会に行った者はいない。
行って何が出来る物でも無い。
皆が何を思い面会に行かなかったのかは知らない。
僕は、明日の自分を見たく無かった。
面会したからと言って、言葉で救える物など無い。
消え行くゴト師に、温かい言葉を掛ける程、僕は優しくない。
二年後に、一号が出て来た時、自分がどうなっているのかすら分からない。
捕まった自分が悪いとしか思えなかった。
判決は執行猶予が付かない実刑になるだろうと予想していた。
しかし助かる可能性はゼロでは無い。
一回目の裁判で検察官は3年の求刑をした。
求刑とは、犯罪者を倒す検察側が、この期間刑務所に入れましょうと裁判官に進言する事である。
この刑期に対して裁判官が、どれぐらい刑務所に入れるかの判決を下す。
判決は、この3年を越える事は無い。
更に執行猶予を付けるかの判断もする。
妄爺は言った。
「求刑が3年越えると、ほぼ執行猶予が付かずに実刑になる。求刑が3年に為らないように弁護士は動かなければ為らなかったんだ。変な奴紹介して悪かったな…」
判決の日の朝、初めて一号の父親と嫁に裁判所前で会った。
会いたくは無かったのだが、どうしてもと頼まれ、断り切れなかった。
判決が下りた後に話しがしたいと父親に言われた。
僕は裁判を傍聴しない事を伝えて待ち合わせの場所を決めた。
裁判所の近くの駐車場に車を入れ、ゴロリと横になる。
判決に執行猶予が付けば、2、3の手続きをして、裁判所か拘置所で数時間後には釈放になる。
執行猶予が付かなければ、外の世界とはお別れになる。
眠ろうと思ったが、眠れずに、ユックリと時間が過ぎて行った。
午前11時から始まった裁判は10分程で終わった。
主文から始まる、一号の判決文の中に、執行猶予のくだりは無かったと嫁が言う。
実刑2年6ヶ月…
豚箱や拘置所に入っていた期間の少しが引かれて2年5ヶ月…
それが、一号の犯した罪の代償であった。
明日は我が身…
判決を聞いて僕が思った事の全てである。
父親は僕に弁護士費用を払いたいと言った。
その横では、涙を堪え切れない嫁が、泣き続けている。
「お金は良いです。一号さんに昔借りたお金ですから。それとこれも…」
そう言って、封筒に入れたいくばくかのお金を、テーブルの上に置いて、僕は逃げるように二人の前から立ち去った。
コメント