電波ゴト39

逮捕されてから約二ヶ月経って判決の日を向かえた。

拘置所は面会出来たが、僕達の中から面会に行った者はいない。

行って何が出来る物でも無い。

皆が何を思い面会に行かなかったのかは知らない。

僕は、明日の自分を見たく無かった。

面会したからと言って、言葉で救える物など無い。

消え行くゴト師に、温かい言葉を掛ける程、僕は優しくない。

二年後に、一号が出て来た時、自分がどうなっているのかすら分からない。

捕まった自分が悪いとしか思えなかった。

判決は執行猶予が付かない実刑になるだろうと予想していた。

しかし助かる可能性はゼロでは無い。

一回目の裁判で検察官は3年の求刑をした。

求刑とは、犯罪者を倒す検察側が、この期間刑務所に入れましょうと裁判官に進言する事である。

この刑期に対して裁判官が、どれぐらい刑務所に入れるかの判決を下す。

判決は、この3年を越える事は無い。

更に執行猶予を付けるかの判断もする。

妄爺は言った。

「求刑が3年越えると、ほぼ執行猶予が付かずに実刑になる。求刑が3年に為らないように弁護士は動かなければ為らなかったんだ。変な奴紹介して悪かったな…」

判決の日の朝、初めて一号の父親と嫁に裁判所前で会った。

会いたくは無かったのだが、どうしてもと頼まれ、断り切れなかった。

判決が下りた後に話しがしたいと父親に言われた。

僕は裁判を傍聴しない事を伝えて待ち合わせの場所を決めた。

裁判所の近くの駐車場に車を入れ、ゴロリと横になる。

判決に執行猶予が付けば、2、3の手続きをして、裁判所か拘置所で数時間後には釈放になる。

執行猶予が付かなければ、外の世界とはお別れになる。

眠ろうと思ったが、眠れずに、ユックリと時間が過ぎて行った。

午前11時から始まった裁判は10分程で終わった。

主文から始まる、一号の判決文の中に、執行猶予のくだりは無かったと嫁が言う。

実刑2年6ヶ月…

豚箱や拘置所に入っていた期間の少しが引かれて2年5ヶ月…

それが、一号の犯した罪の代償であった。

明日は我が身…

判決を聞いて僕が思った事の全てである。

父親は僕に弁護士費用を払いたいと言った。

その横では、涙を堪え切れない嫁が、泣き続けている。

「お金は良いです。一号さんに昔借りたお金ですから。それとこれも…」

そう言って、封筒に入れたいくばくかのお金を、テーブルの上に置いて、僕は逃げるように二人の前から立ち去った。

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