電波ゴト38

一号の家に家宅捜索が入った。

いわゆるガサ入れと言う奴である。

窃盗などの犯罪はガサ入れが入る事が当然である。

家に盗んだ商品や現金などが有る場合が多いからである。

変造カード使用も窃盗ではあるのだが、ガサ入れが入る事は珍しい事であった。

この当時、変造カードは、持っているだけでは罪にならない。

後に法律が変わる。

一号が捕まったのは変造カードを使用したからである。

なので家に変造カードが置いてあったとしても、罪は加算されない。

警察は無駄なガサ入れはしない事が多い筈であった。

一号は、家族に警察から連絡が行く事を嫌い、独身で、住所不定の無職を通していた。

しかし持っていた免許証には、家族が住む住所が記載されている。

一号が独身では無い事ぐらい、警察は掴んでいた可能性は高い。

それでも、警察がガサ入れの必要が無いと思えば、それで通る…

しかし今回の警察はそれを通さなかった。

イジワルだったのか、他に不審を感じたのか…

一号は、住所も言わないし、仲間との繋がりも言わない。

少し警察を、怒らせたのであろう。

そして一号の家族は全てを知る事になった。

弁護士が付いている事を知った家族は、僕に連絡をして来た…

嫁は泣いていた…

旦那がゴトをしていた事は、全く知らなかったと言う。

僕は、一号が家族に言っていた仕事の同僚だと嫁に自己紹介した。

「ほんの出来心で初めて変造カードを使って捕まるなんて、一号さんは運が悪かったね。多分すぐに出られますよ」

出られない事を知りながら僕はそう言った。

自分がとても酷い人間に思える。

裁判で判決が下りるまでの間に、何度も嫁と電話で連絡を取り合った。

その度に嫁は電話口で泣き続ける。

その鳴咽は、僕を責め続けた。

家族に全て知られた一号は、それ以来おとなしくなった。

ガサ入れが終わって、すぐに接見禁止も解けて、家族との面会も出来るようになった。

面会には嫁だけが行っていたようである。

そこでどんな話しがされたのかは知らない。

一号は度々弁護士を呼び出し、実刑になる事だけは防いでくれるように頼み続けている。

ひと月程すると、一号の身柄は警察署の豚箱から東京拘置所に移された。

それは取り調べが終了して、裁判までの待機期間に入った事を報せていた。

コメント