一号の家に家宅捜索が入った。
いわゆるガサ入れと言う奴である。
窃盗などの犯罪はガサ入れが入る事が当然である。
家に盗んだ商品や現金などが有る場合が多いからである。
変造カード使用も窃盗ではあるのだが、ガサ入れが入る事は珍しい事であった。
この当時、変造カードは、持っているだけでは罪にならない。
後に法律が変わる。
一号が捕まったのは変造カードを使用したからである。
なので家に変造カードが置いてあったとしても、罪は加算されない。
警察は無駄なガサ入れはしない事が多い筈であった。
一号は、家族に警察から連絡が行く事を嫌い、独身で、住所不定の無職を通していた。
しかし持っていた免許証には、家族が住む住所が記載されている。
一号が独身では無い事ぐらい、警察は掴んでいた可能性は高い。
それでも、警察がガサ入れの必要が無いと思えば、それで通る…
しかし今回の警察はそれを通さなかった。
イジワルだったのか、他に不審を感じたのか…
一号は、住所も言わないし、仲間との繋がりも言わない。
少し警察を、怒らせたのであろう。
そして一号の家族は全てを知る事になった。
弁護士が付いている事を知った家族は、僕に連絡をして来た…
嫁は泣いていた…
旦那がゴトをしていた事は、全く知らなかったと言う。
僕は、一号が家族に言っていた仕事の同僚だと嫁に自己紹介した。
「ほんの出来心で初めて変造カードを使って捕まるなんて、一号さんは運が悪かったね。多分すぐに出られますよ」
出られない事を知りながら僕はそう言った。
自分がとても酷い人間に思える。
裁判で判決が下りるまでの間に、何度も嫁と電話で連絡を取り合った。
その度に嫁は電話口で泣き続ける。
その鳴咽は、僕を責め続けた。
家族に全て知られた一号は、それ以来おとなしくなった。
ガサ入れが終わって、すぐに接見禁止も解けて、家族との面会も出来るようになった。
面会には嫁だけが行っていたようである。
そこでどんな話しがされたのかは知らない。
一号は度々弁護士を呼び出し、実刑になる事だけは防いでくれるように頼み続けている。
ひと月程すると、一号の身柄は警察署の豚箱から東京拘置所に移された。
それは取り調べが終了して、裁判までの待機期間に入った事を報せていた。
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