電波ゴト34

僕が新人を、ある程度育て上げた頃から、変造カードゴト師に対してホールの対応が変わり始めていた。

テレビでは、ワイドショー以外の一般のニュースでも、連日のように特集が組まれるようになっていた。

テレビの論調は、ゴト師を一方的に責めるのでは無く、カード会社のシステム作りのまずさをあげつらう感じが浮き出ていた。

官僚の天下り先として出来上がった会社にテレビは冷たい。

更には、この先どう取り締まるのかに重点がおかれた特集が多かったと記憶する。

この時期まで、カード会社の対策案は目に見える形では、何一つ打ち出されていない。

話しを付けて大量に変造カードを打ち込んでいる店を捕まえるだけである。

しかし、どの店がゴト師を見逃しているのかは正確に掴んでいただろう。

注意や警告の数も増えていた事であろう。

軽い注意とは言え、それに反応するパチンコ屋が出始めていた。

それらが、今まではゴト師を見逃していたのに突然捕まえる方針に変える。

これに僕達は戸惑った。

パチンコ屋の方針転換に気付けない…

危険が僕達に迫り始めていた。

その当時、カード会社が、どう言う考えで居たのかは、ゴト師程度の僕には分からない。

ホールの対応がキツくなったと手下達に聞いても、僕は手下達が下手くそなんだと考えていた。

見逃していない店を、勝手に自分達が、見逃していると勘違いしていたんだろうと思っていた。

例え、見逃されて居なくても、変造カードなど簡単な物だったのだ。

僕はギン◯ラの電波ゴトに移行していたので、電波ゴトの方がキツい事を実感していた。

「怖いなら辞めろよ。明日から来ないで良いぞ」

それが僕の口癖になっていた。

泣き事を言われても、僕に出来る事は無いのである。

辞めろ、以外に何が言えたであろうか。

程なく、パチンコ屋に捕まる奴が続けざまに二人出た。

僕が直接接触していた手下の中からでは無く、捕まる可能性を感じて少し遠ざけた奴らの中からである。

彼らが捕まった事に対して、罪の意識にかられる事は無かった。

同情すらしない。

自分の保身だけを考えていた。

喋られたら捕まる可能性がある…

僕の事を、喋んないでくれよ…

人の事など全く考えられない。

捕まる恐怖を、ただ感じていた。

僕はそう言う人間であった。

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