電波ゴト33

変な噂が広まるのは困る。

拒否されたり逃走した場合は、一切追い掛けるような真似をするなと店員に伝えておいた。

ナイフが出たり殴られたりする可能性がある。

拒否の確認を、もう一人の店員が離れた位置からしたら、外に待機させている警察に慌てずに伝える。

ここからは警察任せである。

少しは仕事をさせねばなるまい。

警察は、逃げる犯罪者が大好きである。

ホールの外に出たゴト師に対しては、警察は必死になって捕まえようとする。

この二人は手紙の誘惑には勝った。

疑う事も知っていた。

しかし心のどこかで手紙の内容を信じた。

油断するであろう事は予想していた。

捕まらないと安心しているゴト師は、ボンヤリと外に出て、ノンビリ歩いている所を警察に緊急逮捕となった。

あと少し何かが足りなかった。

最初の時こそ制服警官二人がパトカーで店へ来たが、二度目からは私服刑事が覆面パトカーに乗って、4人で来るようになって行った。

後に警察からタケコブタに対して、感謝状が何枚も届く結果になった。

逮捕の際に、大騒ぎになるような事は一度もなかった。

更に後年、タケコブタ系のパチンコ屋は、セキュリティが厳しいと言うゴト師と沢山出会った。

その頃は、スネ夫が出世して、グループの防犯を一手に引き受けていた。

僕はその頃も変わらずにゴト師であった。

ゴト師を騙して捕まえるような事をして、仕返しがあるのではないか?

そうスネ夫が僕に聞いて来た。

「平気だよ」

逮捕されたゴト師は、余程の馬鹿でもない限り仕返しなどしない。

警察に全ての個人情報を握られ、次は刑務所へと直結している。

タケコブタに何か起これば、真っ先に、そのゴト師が疑われる事になる。

リスクのみでリターンが無い犯罪は、キチガイしか起こさない。

損得の計算が出来る奴には無理である。

ゴト師程度の、こそ泥に、心配は要らないと僕は思った。

仮にタケコブタに何かあったとしても、僕には関係の無い事である。

人の痛みに耐えるのは、結構、楽な物である。

その後スネ夫から、仕返しされたと言う報告を、聞いた記憶はない。

僕なら必ず仕返しする…

パチンコ屋に、手痛い思いをさせる方法は、数限りなくある。

一人、二人と生贄を差し出して行くと、カード会社からの注意はピタリと止まった。

しかし調子に乗って、打ち込む金額を上げる事はしなかった。

まだ二軒ある…

無理はよそう…

そう思った。

それから数カ月ごとに、スネ夫の二軒の店は解禁になっていった。

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