電波ゴト32

変造カードゴト師以外の電波ゴト師などを警察に突き出す事は、パチンコ屋にとって面倒臭い物である。

事情聴取に長い時間を割かれ、裁判の時に呼び出される事すらある。

しかし変造カードゴト師の場合は、被害者がカード会社である。

警察に突き出してもパチンコ屋にとって面倒が少ないのである。

裁判の時などは、余程の事がない限り、呼び出される事はない。

逮捕の際に、店員が怪我をすると面倒になるので、店員の安全にも気をつけた作戦になった。

そして数日後…

生贄がタケコブタにやって来た。

僕は見ていない。

新人を連れ廻していた。

良夫ちゃんから生贄の来店を報せる電話が来た。

「ロン毛来ましたよ」

僕は台番号を聞いてスネ夫に伝えた。

準備は全て出来ている。

スネ夫は直ぐさま警察を呼んだ。

出来るだけ覆面パトカーで来るように伝えさせた。

外で赤灯をクルクル回されたのでは騒ぎになりやすい。

しかし初回のこの時は、パトカーで警官が二人来た。

犯罪うんぬんでは無く、営業中のお店に、赤灯を回したパトカーを横づけする事が、迷惑以外の何物でもない事を警察は想像出来ないのであろうか?

使えない奴らである。

警察を呼んだ段階では、まだゴト師を捕まえていない。

逮捕は簡単であった。

なぜか警察は、強く要請しなければ、ゴト師をホールに入り込んで逮捕はしてくれない。

身柄を引き受けるだけである。

警察が到着した直後に行動を開始する。

逮捕に使う店員は二人。

それ以外の店員には、ゴト師が入り込んでいる事さえ教えない。

知れば興味に包まれ動きがおかしくなる。

勘の良いゴト師には、すぐに気付かれる。

そうしておいて、一人の店員がゴト師の元へ向かう。

この店員はタケコブタの中で1番弱そうに見える店員を選んだ。

決してゴト師に恐怖感を与えては行けない。

笑顔で近付き、一枚の手紙をゴト師に渡す。

【警察は呼びません。あなたの変造カードの使用を確認しました。当店の【打ち子】になって頂けませんか?なって頂けるのであれば、事務所までお越しください。タケコブタ店長】

ゴト師が読み終わった事を確認した直後、こちらです、どうぞ、ジュースは何が良いですかなどと言ってニコヤカに店員に案内させる。

変造カードが終わるまでに、10人のゴト師を捕まえたが、8人のゴト師が、この手に引っ掛かり、事務所内で警官に逮捕される結果になった。

ゴト師は【打ち子】と言う言葉が好きなのである。

自分の変造カード使用が、バレた事を知らされた直後のゴト師に、冷静な判断が出来る奴は少ない。

二人は逃げた。

しかし逃げ切らせたりはしない。

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