「この機械が心停止の原因かもね。強い電波なら、何度も浴びれば心臓が止まる事は普通に起こるよ」
え?
マジで?
冷や汗が出た。
更に医者の先生が言った。
「パチンコ屋さんの中で、何をしていたのかは知らないけど、この機械は法律に触れるよね?」
「さあ… どうですかね…」
「犯罪に関連性のあると思われる患者さんは、警察に届けるのが医者の義務なんだよね」
そう医者の先生は言った。
自分のミスに気付いた。
わざわざ警察を僕が呼び寄せたか?
先にリカちゃんの回復度合いを確認するべきであった。
「彼女はもう大丈夫なんですか?」
医者の先生は、話しを逸らされた事に嫌な顔をしながらも答えた。
「電波が原因みたいだから、彼女は4、5日様子を見て退院だけどね…」
仕方ない…
損害の覚悟を決めた…
自分が何か、ドジッたような気がした…
数歩前に出て、テーブルの上に置いてあった道具を、両手で力いっぱいへし折った。
何かを叫んだ医者を無視して、配線の方も、ひきちぎった。
道具の部品を、一つ手の中に握り込む。
組み立てられても機能しない。
しかし損害に泣きたくなった。
「何するんだ!」
「は?何もしてませんよ…」
「いま機械を折ったじゃないか!」
やかましいわ…
50万損こいたばっかりだ…
「折る?折ってませんよ… なんか持ったら形崩れしたみたいだけど…」
言って自分で恥ずかしくなり笑った。
医者は顔を赤くして怒っている。
「もう良いよ!警察呼ぶから!外出て!」
「警察?警察呼んでも無駄じゃないかな?鉄クズ持ってパチンコ屋に行っても犯罪じゃないと思うし… まぁ、好きにして下さい。彼女をよろしくお願いします」
そう言って僕は病院を後にした。
病院に駆け付けた為に、道具を壊す結果になった。
リカちゃんなら警察が来ても、電波のデの字も言わずに自分で言い逃れしたであろう。
打ち子の女の子に、お見舞いに行く事をやめさせた。
他の女の子にお見舞いに行かせ、警察が事情聴取に来たらトボケろとリカちゃんに伝えさせた。
医者の先生は、やはり警察を呼んだ。
伝言はギリギリ事情聴取前にリカちゃんに伝わった。
彼女なら伝言など無くても言い逃れるとは思っていた。
事情聴取はアッサリかわしたが、警察は道具の放棄の書類にハンコを捺させる事を、リカちゃんに強要した。
当然壊れた道具など、ただのゴミなのでリカちゃんはハンコを捺した。
暫くすると彼女は退院した。
「アタシ死んだよ〜」
そう言って笑いながら僕の所に来た。
「あっそう… 良かったね」
なんだよコイツ…
ピンピンしやがって…
あの時僕が駆け付けなければ、警察も呼ばれず、道具は無事に戻って来たかもしれない。
空回りして僕が勝手に道具を壊したような気もする。
放っておけば例え警察に没収になったとしても、損害はリカちゃんから取れたのである。
相手が男なら、何がなんだろうが、すぐに言う。
「金払え」
しかしリカちゃんは強敵である。
せこ〜〜い、とか、デカイ声でブリッ子しながら、周りに言って廻る。
恥ずかしいのである。
試しにちょっと言ってみた。
「道具代… 払ってくれる?」
ジロッと睨まれ言われた。
「なんでよ!」
なんでって…
払えや…
電波の事を医者に喋ったのは、彼女の体を心配したからなのである。
女としてでは無く、仲間としてである。
しかし心配したなどと言えば、トチ狂った勘違いをされる。
更に恐ろしい事を言って廻られる。
言えない…
道具代は諦めるしか無かった。
リカちゃん苦手…
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