期待を胸にブローカーに電話を掛けた。
ここで言う車のブローカーとは、店舗を持たずに車の売り買いの仲介をして口利き料を取る人の事である。
コイツは質の良く無いブローカーであった。
細かい話しは伏せてナンバーから車の持ち主を捜せるか聞いた。
「捜せるぞ。調べてやろうか?」
ブローカーはアッサリ言った。
今では個人情報保護により簡単には無理である。
少し考えがあったのでブローカーに数万円払って仲間に引き込んだ。
三日後、車の持ち主の名前と住所が知れた。
被害者Aが襲われたパチンコホールのすぐ近所の地名である。
名前が知れる三日の間に、反撃の準備もあらかた出来上がっている。
最後に4人組を連れ込む場所を探した。
道端で締め上げる訳には行かない。
警察に捕まる覚悟はしたが、捕まるのは嫌である。
出来れば荒っぽい事はしたくないが、今回ばかりは仕方なかった。
基本的に手下には個人個人にケツ持ちのヤクザが付いている。
僕への紹介者のほとんどが妄爺の友達のヤクザ者であったからである。
揉め事があれば自分達で片付ける事が普通であった。
しかしデコボコにはケツ持ちがいなかった。
居なくても普通は、妄爺の店に出入りしているヤクザと仲良くなって、ケツ持ちを頼むのだが、稼ぎが少ないので彼は頼んでいなかった。
僕にも居ない。
頼む気も無い。
結果、自分達でどうにかするしかない…
意地を張るのは大変である。
こいつケツ持ちぐらい頼んどけよ…
弱いくせに…
デコボコの顔を見てそう思った。
僕とデコボコで4人に勝てる訳がない。
言ってしまえばデコボコなど戦力外である。
デコボコを前面に押し出して行けば、逆に舐められる原因ですらある。
僕は一人、戦場の前線で戦って…
んな訳ない!
怖い!
危ない!
負けるの嫌!
やるからには絶対勝つ方法を考える。
返り討ちなどゴメンである…
手下の中から、脳みそ筋肉な奴らを4人選んで声を掛けた。
「上手くいけば一人、2、30万になるぞ。手伝え…」
嫌がったらクビだぞと言わんばかりのプレッシャーは掛けた…
彼らはみんな良い人だったので、喜んで協力してくれた…
その筋肉マン達が更に仲間を集め、総勢8人になった。
これで8対4。
勝ちが見えたような気がする。
先にGTRの奴をサラう積もりなので厳密に言えば8対1である。
その上で一人づつおびき出す。
そして道具の回収と有り金を全部頂く。
頭の中でいくつか浮かんだ方法を、何度も何度もシュミレーションした。
揉め組にサラわれた時の、自分の心の震えを思い出した。
連れ去る時は、あれで良い…
しかし、僕を無事に返したアイツらの方法は失敗だ…
僕は揉め組のヤクザを恐れていない…
助けられた事に感謝なども一切していない。
チャンスがあれば仕返しさえしたいと思っている。
4人組に僕と同じ感情を持たせたら負けのような気がした。
やり返される可能性が高いように思える。
徹底的に恐怖を植え付ける…
二度と抵抗したく無くなるように…
警察やヤクザに助けを求めたら殺されると思わせる程痛めつける。
僕に出来るだろうか…
いや…
やるしかない…
相手は4人組だけじゃ無い…
自分の手下達もビビらせる…
恐怖で周りを支配する。
見てろ…
ロクデナシども…
そう僕は思ってしまった。
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