捕まって裁判まで行くと、電波法やら窃盗やら、建造物侵入やら器物損壊などの罪状の中から、二つ程を組み合わされ懲役2年6月、執行猶予4年が相場であった。
執行猶予が付かない事も多々ある。
運良く、道具没収でホールから帰らされたり、裁判まで行ったが執行猶予が付いて、約二ヶ月後に社会復帰しても、待っているのは没収された道具代の取り立てである。
お金があればソコでゴト師を辞めると言う選択は出来る…場合もある。
無ければ又ゴトを続けて借金を返して行く。
一度捕まっているので手が縮む。
臆病になる…
又捕まる。
刑務所に入る。
抜け出せない螺旋の中に、沢山のゴト師がいた。
全て自業自得である。
僕にとっては笑い話しでしか無かった。
しかし笑っている場合では無い事も起きた。
道具狩りである。
僕は結局、稼げる電波ゴト師を10人ほど世に送り出した。
稼げない奴らを入れると最終的に30人近くである。
稼げない奴らとは、道具のリース代要員である。
一日がかりで、6万円程を必死になって抜いて来て、道具のリース代として4万円を僕に払う。
それに満足する奴らであった。
だからと言って僕が無理矢理やらせている訳では無い。
逆である。
変造カードの打ち方を見ていて、電波ゴトは無理だと僕が判断した奴らである。
変造カードよりも、上手くやれたら電波ゴトの方が儲けはデカい。
それを見たり聞いたりして羨ましいと思っていた奴らである。
どうしてもやらせてくれと言われたら断る理由も探しづらい。
「捕まる覚悟はしろよ。多分お前達は捕まるぞ。それと道具も仕入れちゃうから途中で辞める場合は金取るぞ」
捕まっても僕達との関係を喋る奴らでは無いと思うが、それだけは先にハッキリ伝えた。
どうでも良い奴らとは言え、捕まられたら多少のショックは僕だって感じる。
ゴト師などやろうとする奴らはみな欲深である。
自分の技量を計る事すら出来ないで、やりたい!ばかりを連呼する。
当然のようにソイツらの中から逮捕者は出た。
しかし、やらせた僕に罪があったとは認められない。
自業自得である。
放免された後にヤクザ者達のように借金で縛るような事は僕は一切していない。
ゴト師を続けるか辞めるかは彼らが好きに決めた。
しかし彼らを襲う不幸は、逮捕ばかりでは無かった。
技術の劣る手下が僕に電話を掛けて来て突然言った。
「すんません… ぶっ飛ばされて道具奪われました…」
え?
ぶっ飛ばされて?
店員か?
初めての事だったので意味がよく分からなかった。
「誰に?」
そう僕は手下に聞いた。
電波ゴトをパチンコ屋で終わらせて、外に出た所で4人組に声を掛けられたと言う。
友好的だったので気を許してしまった。
パチンコ屋から少し離れた所で話しをする事になり4人組に付いていった。
そこでいきなり襲われた。
ボコボコに殴られた後で手下はナイフを突き付けられた。
そして体にガムテープで留めてある、配線から何から電波道具一式を強奪された。
道具を渡したのに更に殴られ、持っていたお金も全て奪われた…
完全に強盗じゃん!!
警察に通報だ!
と言う訳には当然行かない…
そう一瞬思った。
しかし良く考えると通報出来る事に気付いた。
電波の道具は持っているだけでは罪にならない。
被害者Aの手下の罪は警察には問えないであろう。
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