リカちゃんは人を使う時には必ず女の子を使った。
男を使えば、危ない事を知っていたのだろう。
手下の中には、取り分を少し渡すから一緒にやらせてくれとリカちゃんに頼む奴もいた。
しかし彼女はそれらを頑なに拒んだ。
断る時は相手を怒らせないように、上手くあしらう術も知っていた。
仲間に入れて貰えなかった男は僕に言った。
「あいつ男にヤラセ捲ってんだろ。それで話し付けてんだよ」
ネタむな…
低脳野郎…
みっともない…
僕は違うと思った。
彼女は一見簡単に尻を振りそうに見せているだけで、体を売るような事はしていないように思えた。
見てくれは悪くは無いのである。
その気があればソチラの業界の方が、多少は安全に稼げるだろう。
それでもゴト師をしている。
分からない…
そう僕が思いたかっただけかもしれない…
しかしそれを証明するように、店員がしつこく言い寄るようになると、ためらいなく切っていた。
真相は知らない。
僕には関係の無い事である。
ある時、店員をただ切るのが勿体ないから何か出来ないかとリカちゃんが僕に相談して来た。
ハーネスを教えて、細かい取り付け方などの説明をした。
取り付け後の店員のコントロールのしかたも悪知恵を働かせて教えた。
「良いのあるね〜 考えとくわ」
ギンパラの電波ゴトが流行り出し、ほとんどのパチンコ屋が電波ゴトの情報を知るようになり、周りのゴト師がネを上げても、リカちゃんだけは変わらずに抜き続けて行く事になる。
それを、指をくわえて見ているだけしか出来ない手下達を見ると、可笑しくて仕方ない。
嫉みやヤッカミで溢れている。
道具は、使う人間によって様々な形を見せるようであった。
リカちゃんが一人で電波ゴトをするようになってからも、僕は手下を連れ廻して稼ぎ続けていた。
しかし道具が中々入って来ない。
月に二台入れば良い方であった。
リュウは何ヶ所かの道具屋に声を掛けていた。
入る道具の性能は変わらないのだが形状がマチマチである。
全てコピーであろう。
ゴト道具には特許が無い。
一つ世の中に出回れば、すぐにコピー商品が出回るのが常識であった。
しかしどこの道具屋に聞いても、自分の所がオリジナルだと言う。
有り得ない。
同時多発的に同じ道具が出回るなど考えられる訳がない。
道具屋には道具屋の戦いがあるのであった。
コピーはゴト師にとって悪い事ではない。
完全に元の道具のコピーをしてくる技術力の低い道具屋は困り物だが…
ほとんどの場合、道具には新しい機能が付いたり、小型化されて出て来る事が多い。
リュウが手に入れる値段も下がって行く。
ギンパラの道具が、一番安い時で30万円程であった。
しかし実際にホールで使う人間の元には100万から200万円前後で出回る事が普通ではなかっただろうか…
道具屋との間にヤクザや欲深い人間が入った場合の打ち子は悲惨である。
借用書や保証金や保証人などを取られる事が多く、身動きが出来ない状態にされる。
更にホールで打つ時に見張りが付いて来て、アガリの20%前後しか貰えないような目にあった。
捕まって道具の没収等されよう物なら目もあてられない。
悲惨を通り越して地獄である。
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