芋づる式に捕まると思い、最初はホール内でリカちゃんと口を聞かないようにしていたが、途中から普通に喋るようになった。
僕が捕まっても自分は捕まらないとリカちゃんが言うからである。
「しつこくナンパされてたって言うから平気だよ」
そうリカちゃんは言った。
このアバズレめ〜!
お前なんか誰がナンパするか!
ウンコが付いたパンツが見えそうな短いスカートはきやがって!
「捕まっても助けないよ〜」
とまで言われた…
ウンコ女!!
頼むか!
リカちゃんの前では捕まれないと思った。
余計なプレッシャーが増した。
味方の筈が敵であった…
リカちゃんは最初の頃は車の中で僕にベタベタして来ていた。
安い飲み屋の女の手口に感じた。
つい言った。
「触るな… ウザい」
それからは僕に女の部分は見せなくなった。
遠慮も無くなった…
こんな女に引っかかる男が不思議でならない。
車の中で、キャバクラのお客に電話をしている声など、完全に裏返っている。
言ってる事も嘘ばっかりだ。
電話を切った直後など、お客はボロカスに言われていた。
完全にお客をお金としか見ていない。
電話を切った直後に、お客の悪口を一言言うのが癖のようであった。
その一言を聞く度に、別段悪い事はしていないがギクッとする…
確かにツボを突いている。
僕はキャバクラなどは付き合いでしか行かなかったが、行くのが怖くなった…
男は馬鹿だと気付かされる一言であった。
中途半端な可愛いさとは男を引き付けるのであろうか…
リカちゃんは露出が高い割に、お手頃感も演出していた。
裏表の切り替えは、さながら演技派女優のようである。
変造カードをやっている時も、男の店員と仲良くなって、変造カードの使用を見逃して貰ったりしていた。
相手の店員が、下っ端の店員だったので、大々的には出来なかったが、リカちゃん一人は安全に打てたりしていた。
しかし、垂らし込んだ男の店員がいる時間帯だけである。
男の仲間を連れて行くと店員の男にヤキモチを妬かれるので、キャバクラの女友達をよく連れて行っていた。
その女友達には当然カードを高く売っている。
人としては嫌悪していたがゴト師としてのリカちゃんを僕は認めていた。
僕に似ている…
そう思っていた。
リカちゃんと、半月ほどホールを電波ゴトで廻った。
毎日のように新しい道具はまだかと言われ続ける。
すでにリカちゃんも道具の使い方はマスターしている。
しかし新しい道具は入荷予定が延びたりして中々入って来なかった。
朝の車の中で余りにもウルサイので電波ゴトを交代した。
最初なので二人分は無理である。
僕は打ち子ですら無く見学者であった…
一緒にホールに入る必要もない。
しかし少し心配である。
道具もリカちゃんも…
どちらかと言うと道具…
ドジッたらすぐ取り上げる事にして僕はリカちゃんの右側の台に座った。
「お前はどうなっても良いけど道具は死守しろよ」
僕は本音を言った。
「嘘ばっかり。リカが心配なくせに〜」
なんだか嬉しそうである。
付いて来る必要の無い僕が付いて来たので勘違いしている。
迷惑である。
「8対2で道具」
そう言って僕は前を向いた。
少しすると、死ねっ!と言う掛け声とともにリカちゃんが体感機の操作を開始した。
リカちゃんの打っている姿には不自然な所は見えない。
僕の初めての時よりも、落ち着いていた。
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