電波ゴト15

僕が声を掛けた奴らは、基本みんな良い根性をしている奴らばかりである。

決して普段の言動や、見た目がイキガッている奴らではない。

ハッタリを使ったり、用も無いのに徒党を組む奴らは嫌いであった。

そう言う奴らは一人になると笑える程モロい。

徒党を組まないと何も出来ない奴らに用は無かった。

死ねとさえ思っていた。

「真面目に働きなよ」

それがクビにする時の、彼らに贈る僕の言葉であった。

そんな中でリカちゃんはトップクラスの根性をしていた。

自分が女である事を利用する事も知っていた。

まだ僕が、リカちゃんのボッタクリバーの事件を知る前の事である。

集めた奴らに聞いた。

「誰が最初にやる?」

変造カードは安全だが、一日平均10万円にするのは厳しい。

しかし電波ゴトは道具代を僕に取られたとしても20万円にはなる。

誰も悩みもせずに、やりたいと言った。

僕にすれば、この中の奴なら誰でも良かった。

ここでリカちゃんが動いた。

「リカちゃんがやりた〜い。だってママが病気でお金がいるんだも〜ん」

嘘である!

コイツのママはピンピンしていた…

周りの男達は、同情してなのか、たぶらかされてなのかは知らないが、リカちゃんに順番を譲った。

リカちゃんと二人の時に聞いた。

「お母さん病気なの?」

「知らないよ。会ってないもん。勝手に男とヨロシクやってんじゃない」

リカちゃんは答えてニヤリとした。

自分が先にやる為の嘘だったのか…

とんでも無い奴だと思った。

それでも家庭の複雑さはなんとなく理解出来た。

しかしこれも嘘だった!

後に知ったが両親健在で、普通のサラリーマン家庭であった。

リカちゃんは、喋ると全てが嘘だった。

したたかを人の形にするとリカちゃんだった。

しかしリカちゃんが最初にやるのは、僕にとっても都合が良かった。

この頃リカちゃんは昼は変造カードをやって、夜はキャバクラで働いていた。

その為、夜7時にはゴトを切り上げていた。

一緒に電波ゴトをやるとは言っても、リカちゃんのやる事は取り分が安い安全な打ち子である。

当たりは全て僕が電波で引く。

捕まる可能性は僕一人。

人の台に当たりを掛けるのは、結構キツい労働である。

早目にあがってくれるのは、僕としても助かった。

打ち子の取り分は、打ち子の台に僕が当たりを引いて出した分の三割である。

自分の30万を確保しながらやると、打ち子の台では15万円程しか出せない。

なので渡すお金は、4、5万円である。

当然変造カードで稼ぐよりも少ない。

リカちゃんは、早上がりなので更に少し安かった。

しかし文句は誰も言わない。

いや…

言えない。

次の電波道具は打ち子をやった自分の担当だと分かっているからである。

それに僕は、明日から来ないで良いぞとすぐに言う。

ゴトに関してのルールは僕が全て決める。

逆らえばクビだ。

まるで小さな独裁国家であった。

二人で廻る事によって、僕の利益は一日40万に少し届かない程度である。

人を育てながら僕だけ儲けを積み上げてく。

お金は段々と、危険に比例して入るシステムになって行った。

三人で廻る事もあったが、儲け的には余り変わらず、危険だけが増すので二人で廻る事が多くなった。

リカちゃんと僕のコンビはホールに入っても不自然には見えない。

お断りしたかったが、カップルに見えていたと思う。

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