電波ゴト10

そう思いながらも見ていると、当たりを延々と引き続ける。

止まらない大当たり…

裏ロムやハーネス等に全く引けを取らない。

出す気ならどこまでも出せる。

更には持ち運び自由…

エロモードの頭がカチリと金の亡者ゴト師モードに切り替わった。

「凄いな…」

僕の初めの感想である。

「まだそんなに出回ってないヨ」

やり方によってはカードの儲けを越えるかも知れないと思った。

当然の様に店側には打撃だけを与える。

見逃しなどある訳が無い。

変造カードよりも厳しい事はすぐに気付いた。

使い方の説明を聞いて、多少人は選ぶと思った。

しかし僕の周りには手下がいた。

条件に合う奴も何人かいる。

金持ちになる…

そう思った。

「これ何台でも入るの?」

「すぐにいっぱいは無理アルヨ。予約が凄いよ。俺には60万で入るけど日本人だと200万前後で買ってるみたいだよ。そっちを優先されちゃうヨ」

200万…

高いな…

すぐ元は取れるだろうけど…

「お前この道具、どうしたい?」

そう僕はリュウに聞いた。

「まだ売らない方が良いアルヨ。二人で一台づつ買ってやろうよ。三十万ぐらいはイケるヨ!」

それはダメだろ…

雪ちゃんが悲しむ…

しかし売らずに自分達でと言うのは、僕と同じ考えであった。

「お前にはサンゾクがあるだろ。雪ちゃんがうるさいだろうし…」

リュウは平気だと言う。

「外国人登録書の精巧に偽造した奴が手に入ったよ。もうすぐパスポートの偽造した奴も入るアルヨ」

それを持っていれば道端で捕まったりする事は無いとリュウは言う。

しかし問題はそんな事では無いと思った。

道端よりも危ないゴトをするのである。

変造カードとは意味が違うのである。

ホール側は本気で捕まえに来る。

一つのドジが逮捕へと直結している。

運よく帰らされる等は計算に入れられない。

リュウが捕まるイコール強制送還であった。

そのうえ見た目がどんなに繕っても、〇国人である事を隠せていない。

疑って見られたら看破されるように思えた。

更にはリュウのゴト師としての腕を僕は知らない。

話しの付いた店で打つのと、外の世界で打つのでは、掛かるプレッシャーが全く別物であった。

「雪ちゃんにコレやるって言えるのか?」

リュウはビックリした顔をしている。

「やめてくれヨ!言える訳無いアルヨ!言ったらダメだよ。怒ると凄いんだ!黙っていれば平気だヨ!」

雪ちゃんどんだけ怖いんだろ…

想像しづらかった。

僕は女に騙されるタイプか…

なんにせよ話しの付いた店がある内は雪ちゃんとの約束は守りたい。

僕には強制送還と言う言葉が、ひどく重い言葉に聞こえていた。

「じゃあダメだな。お前に捕まられたら雪ちゃん僕にカード売ってくれなくなるじゃん。それにお前ヘボそうだしな。巻き添えで捕まりたくないよ」

「ヘボ違うアルヨ!」

リュウはムキになって言う。

「ヘボだろ。女怖いって。ヘボじゃないなら雪ちゃんに言ってからにしろよ。そうじゃなきゃダメだな」

リュウはガクッと肩を落として言った。

「彼女は俺が大好きなんだ… 俺を愛し過ぎてるんダ」

イラッとした…

ヤキモチでは無い…

セリフ自体が受け入れられない気持ち悪さであった。

結果、ギンパラをリュウはやらずに、ピンはね男になった。

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