そして作り上げられた機械が僕の目の前にあった。
形状は大人用の弁当箱を一回り小さくした程の物である。
この弁当箱が電波を発信する。
更に電波を発信させる為の、配線にボタンが付いている物と体感機がセットであった。
弁当箱はセカンドバックに入れて持ち運びして使う。
配線は体に巻き付ける
配線の先に付いている電波を飛ばすボタンは、右足の親指にガムテープで留める。
体感機は左足のフトモモの辺りにガムテープで留めて使用する。
体感機とは実際の当たりを探す機械の事である。
合法で体感機と言う物が当時は出回っていたが、それをゴト用にアレンジした物であった。
実際の当たりを探す…
そう… 当たりは探せるのである。
パチンコはチャッカーに玉が入った瞬間に当たりかハズレかの判定をしている。
その他の判定は無い。
オカルトと呼ばれる非科学的な大当たりなど無いと言う事である。
「魚群が頻発してるからソロソロあたるわ〜」
「回転数が〇〇回だからソロソロ当たるわ〜」
等は一切関係無い。
完全にチャッカーに当たりのタイミングで玉が入ったかどうかに掛かっている。
しかしなぜかオカルトも侮れない…
僕も少し信じちゃったりする…
このゴト道具は、初当たりは自力で引かなければならなかった。
スタートチャッカーに玉が入る度に体感機のボタンを押す。
その内、当たりが来ると、体感機がどのタイミングで玉をチャッカーに入れたら、当たりかを記憶する。
そのタイミングで電波を飛ばして強制的に保留ランプを点灯させる。
当たりが来る。
一度当たりを引くと、次からは簡単に当たりが引けると言う物である。
う〜ん
随分はしょった!
もう少し…
メーカーは電波に対する対策はした。
しかしそれは携帯等の微弱な電波に対してだけであった。
メーカー側の立場に立って言い訳をしてみると、今現在でも病院や飛行機では携帯電話使用が禁止である。
電波は強力だと防げないと言う事である。
これは電波ゴトをしていた人間も余り知らなかったと思うのだが、電波が乗る所は主にパチンコ台側の配線であった。
よくスタートチャッカーに電波が乗ると説明されていたように記憶する。
のちに、このギンパラのゴト道具は、コピーや改良を繰り返し、小型化していく。
更には初当たりも手軽に引けるようになって行く。
当然のように、現金機では無い、カード使用機の、CRギンパラ用も出現した。
そして変造カードと並ぶ二代ゴト道具となって行く。
このゴト道具…
見た時焦った。
僕はリュウに言った。
「デケーだろ…」
「うん、ちょっと大きいネ。でも、セカンドバッグに入れていけば平気アルヨ」
セカンドバッグって…
今時、居ないよ…
少し前までは流行りだったのか、男でもブランド物のセカンドバッグを持ち歩く人達が沢山いた。
今時ヤクザぐらいしか持ってねぇだろ…
こんなの嫌だよ…
当たり方を見る前に僕は拒絶していた。
「まあ、良いから見てヨ」
そう言うので仕方なく見た。
どうせすぐ揃うんだろ…
見なくても分かってんだよ…
この、ドザエモン野郎…
言われたらポッケから出せば良いんだよ…
〇国のドザエモンは、言われないのに出すのかよ…
そう思った。
ダルイから雪ちゃんの部屋の方を気にしながら見てた。
たまにエッチなカッコで寝てたりする…
しかし今は居ない。
残念である…
雪ちゃん早く帰って来ないかなぁと思いながら見ていたら、リュウが興奮した声で当たりを引いた事を告げた。
興奮すんな、馬鹿…
お前だって当たるの知ってたんだろ…
うざリュウめ…
そう僕は思った。
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