電波ゴト7

「自分はパチンコ屋のクズ店員なんかに捕まったりしませんから!ぶっ殺したって逃げて見せますよ!!」

駄目だよ…

殺したら…

またおかしいのが来たなぁと思っていた。

はっきり言って、この段階で帰って欲しかった。

紹介者の妄爺の友達が、この光景を見て、笑いながら言った。

「コイツなら大丈夫だよ。気合い入ってからよ」

いらんよ…

人殺す気合いなんて…

やる事ゴトだよ…

勘違いすんな、馬鹿…

捕まっても助けたりしないし、責任も取らない事を確認した。

まあ、これぐらいの方が良いのかなと思っていた。

取りあえずやりやすいホールに行った。

最初の内、新人君は僕の近くで打たせる事にしている。

少年Aも当然そうした。

なんの問題も無く普通に打っている。

キョロキョロする訳でも無く、怖がってる感じも一切ない。

2時間程近くで打つのを見ていて、こりゃ平気だなと思って僕は台を移動した。

それからも1時間ごとぐらいに少年Aを見に行っていた。

何回目か見に行った時に感じた。

何かおかしい…

店員の雰囲気が…

なんかやったのかなと思い、少ししてから少年Aの近くに戻って、僕はまた彼を見ていた。

近付く店員が明らかに少年Aを見てビビる動きをしている。

知り合いかなと思った。

しかし別段問題はなさそうである。

それから少しして、その日は終わりにした。

車の中で少年Aに聞いてみた。

「店員知り合いだったの?」

「知りません!」

「なんかあったの?」

「何もありません!」

変なのと思いながらも放っておいた。

少し会話の続かない取っ付きにくい奴である。

新人君とホールを一緒に廻るのは、三、四日にしていた。

大体それぐらいの間に、一、二回は危ない場面に遭遇するので、どんな奴かが分かる物であった。

二日目に原因に気付いた。

少年Aは僕が近くで打っている時は普通に打っている。

ところが僕が離れると、何もしていない店員を、物凄い顔で睨み付けているではないか…

それをたまたま見に行った時に気付いた。

何やってんだアイツ…

店員は意味が分からず完全に縮み上がっている。

知り合いかとこの時も僕は思った。

暫く少年Aに見つからないように見ていて、僕はある事に気がついた。

彼は近づく店員全てを物凄い顔で睨んでいる…

アイツ…

店員を目で殺そうとしとる…

新しいタイプのプッツンであった。

ニューバージョンとか要らんよ!

速攻店から連れ出した。

そんな事されたら、やりやすい店が潰れる!

「お前 何やってんだよ!」

僕は吠えた。

彼は、別に、と言った切り、僕の事まで黒目が小さい底光りする目で睨んでいる…

一瞬ゾッとして殺される危険を感じた。

ヤバイ…

殺られる…

コイツ本物のキチガイだ…

敵も味方も分からない…

オタオタしながら少年Aを連れ帰った情けない僕。

変造カードをやらせない理由は無い。

でも一緒に廻るのはもう嫌だ…

ゴトをやりに行って殺されている場合じゃない。

カードの値段を高くして、その日を最後に僕の近くから追っ払った。

勝手にやってくれ…

そう言う思いであった。

少年Aは、一人でゴトを始めて一週間もたなかった。

店員を殺しかけてアッサリ捕まった。

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