偽造・変造カード39

しかしスネ夫ハウスには三十万円分の餌しかなかった。

良夫ちゃんが僕の背中を叩く。

「なに!? 緊急?」

「スネ夫が首振ってます」

え?

もう?

早過ぎだな…

この頃の、良夫ちゃんとスネ夫のジェスチャーコンタクトは、完璧である。

「じゃあ出よ…」

そう僕は言って、使い掛けのカードを消化した。

スネ夫の店を出て、婆さん達に使った変造カードの金額を聞いた。

三人併せて十万円程である。

この所、段々と打ち込む金額が下がっている。

原因は、他の見知らぬゴト師である。

スネ夫の店でもチラホラ見掛けていた。

このまま行くと、僕達の抜ける分は減る事はあっても増える事はない。

僕に損をさせる奴ら…

完全なる敵…

ゴト師なんかやりやがって…

真面目に働け!

倒す!

そう決めた。

ゴト師壊滅作戦が始まる。

「良夫ちゃん、スネ夫と話し出来ないの?」

そう僕は聞いた。

「この前ジュース持って行ったら、受け取ったけど睨まれました」

受け取ったか…

お金で釣れるかな?

しかしお金は最後の手段だ…

なぜなら…

勿体ないからだ!

僕はスネ夫を完璧に理解している。

あいつは性格もスネ夫だ。

顔がスネ夫なんだから絶対そうだ!

読み切った…

僕に間違いなどありはしない…

スネ夫の小心な所を突く!

怖がらせて僕をドザエモンと思わせる事にした。

スネ夫の今置かれている状況は、スネ夫も困っていると予想出来た。

僕達に三十万円で帰らせていたのは、何を根拠にしたのか分からないが、カード会社対策の積もりであろう。

三十万円ならカード会社もウルサく言わないと考えたのだろう。

継続も当然まずい事に気付くような物だが、そこは目をつむっている。

欲がそうさせているのか、ただの間抜けなのか…

僕達はスネ夫が首を振れば大人しく帰る。

しかし一般のゴト師はそのまま打ち続ける。

打ち込まれる金額は三十万円を越えるだろう。

スネ夫の店に入り込んでいるゴト師は、10人近く確認している。

それらが日替わりで来る。

この時既に何人かを僕が追い出している。

それでこの数なのである。

僕の追い出し方は単純である。

ゴト師の急所を突く。

急所とは見られる事である。

泥棒などするような悪い奴らに同情はいらない…

ん?

ゴト師の存在を確認したら横の席にスッと座る。

僕の目を逃れるゴト師などいない…

そしてカードの出し入れするタイミングに、ソイツの手元を露骨に見つめる。

一枚の変造カードを使うのが限界である。

気合いの入ったゴト師は二枚目にチャレンジしようとする。

その時は手元と顔を交互にチラチラ見る。

そして貸し玉ボタンを押す度に、ソイツの顔をチラッと見る。

生意気な口をきいて来よう物なら遠慮はしない。

「お前、それ何のカード?おい」

この当時変造カードは、三千円券が主流であった。

気合いの入ったゴト師も、六千円使い切ると逃げるように僕の隣りを離れた。

その後、店を出て行くのを確認する。

台を移動してやろう物なら、今度は少し離れた席から、露骨にソイツの動きを見つめ続ける。

近づいて殴られたくは無い。

しかしソイツはすぐに逃げ出した。

逃げる際に物凄い顔で僕を睨む奴もいた。

僕の利益の為なら、そんな物へっちゃらである。

泥棒ふぜいに睨まれても痛くも痒くもない。

負〜けへ〜んで〜

そんな感じだ。

コメント