しかしスネ夫ハウスには三十万円分の餌しかなかった。
良夫ちゃんが僕の背中を叩く。
「なに!? 緊急?」
「スネ夫が首振ってます」
え?
もう?
早過ぎだな…
この頃の、良夫ちゃんとスネ夫のジェスチャーコンタクトは、完璧である。
「じゃあ出よ…」
そう僕は言って、使い掛けのカードを消化した。
スネ夫の店を出て、婆さん達に使った変造カードの金額を聞いた。
三人併せて十万円程である。
この所、段々と打ち込む金額が下がっている。
原因は、他の見知らぬゴト師である。
スネ夫の店でもチラホラ見掛けていた。
このまま行くと、僕達の抜ける分は減る事はあっても増える事はない。
僕に損をさせる奴ら…
完全なる敵…
ゴト師なんかやりやがって…
真面目に働け!
倒す!
そう決めた。
ゴト師壊滅作戦が始まる。
「良夫ちゃん、スネ夫と話し出来ないの?」
そう僕は聞いた。
「この前ジュース持って行ったら、受け取ったけど睨まれました」
受け取ったか…
お金で釣れるかな?
しかしお金は最後の手段だ…
なぜなら…
勿体ないからだ!
僕はスネ夫を完璧に理解している。
あいつは性格もスネ夫だ。
顔がスネ夫なんだから絶対そうだ!
読み切った…
僕に間違いなどありはしない…
スネ夫の小心な所を突く!
怖がらせて僕をドザエモンと思わせる事にした。
スネ夫の今置かれている状況は、スネ夫も困っていると予想出来た。
僕達に三十万円で帰らせていたのは、何を根拠にしたのか分からないが、カード会社対策の積もりであろう。
三十万円ならカード会社もウルサく言わないと考えたのだろう。
継続も当然まずい事に気付くような物だが、そこは目をつむっている。
欲がそうさせているのか、ただの間抜けなのか…
僕達はスネ夫が首を振れば大人しく帰る。
しかし一般のゴト師はそのまま打ち続ける。
打ち込まれる金額は三十万円を越えるだろう。
スネ夫の店に入り込んでいるゴト師は、10人近く確認している。
それらが日替わりで来る。
この時既に何人かを僕が追い出している。
それでこの数なのである。
僕の追い出し方は単純である。
ゴト師の急所を突く。
急所とは見られる事である。
泥棒などするような悪い奴らに同情はいらない…
ん?
ゴト師の存在を確認したら横の席にスッと座る。
僕の目を逃れるゴト師などいない…
そしてカードの出し入れするタイミングに、ソイツの手元を露骨に見つめる。
一枚の変造カードを使うのが限界である。
気合いの入ったゴト師は二枚目にチャレンジしようとする。
その時は手元と顔を交互にチラチラ見る。
そして貸し玉ボタンを押す度に、ソイツの顔をチラッと見る。
生意気な口をきいて来よう物なら遠慮はしない。
「お前、それ何のカード?おい」
この当時変造カードは、三千円券が主流であった。
気合いの入ったゴト師も、六千円使い切ると逃げるように僕の隣りを離れた。
その後、店を出て行くのを確認する。
台を移動してやろう物なら、今度は少し離れた席から、露骨にソイツの動きを見つめ続ける。
近づいて殴られたくは無い。
しかしソイツはすぐに逃げ出した。
逃げる際に物凄い顔で僕を睨む奴もいた。
僕の利益の為なら、そんな物へっちゃらである。
泥棒ふぜいに睨まれても痛くも痒くもない。
負〜けへ〜んで〜
そんな感じだ。
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