偽造・変造カード38

僕によって散々な目にあったサンゾクの社長や、店員達のその後についても少し触れておこうか…

店員の中の二人とは、仲良くなっていたリュウを通して、その後も付き合いが続いていく。

当然ゴト関係である。

サンゾクの社長と知りあって、社長絡みで僕が手にしたお金は、海賊の儲けも併せると、八ヶ月の間に五千万円を越える。

社長には何が残っただろう…

何も残ってはいないだろう。

金銭的にも精神的にもマイナスの方が圧倒的に多いはずである。

サンゾクはこの後、一年を越えて開店する事は無かった。

いや…

それすらハッキリ分からない。

社長と僕との付き合いは、サンゾク閉店後、一切無い。

二年程後、たまたまサンゾクの前を車で通り掛かった事がある。

その時、僕が見たお店の名前は、サンゾクでは無かった。

サンゾクよりも外観が立派になった、綺麗なパチンコ屋に変わっていた。

さらに数年後、その綺麗なパチンコ屋は、周りの土地を飲み込んで、巨大なパチンコ屋へと変わっていた。

経営者が誰なのかは全く知らない。

「あの店は厳しい!」

そう、あるゴト師が言っていた…

僕は経営者が社長では無いような気がした。

その巨大なパチンコ屋を見掛ける度に思う。

あの人には無理だ…

知恵が足りな過ぎる…

僕にやられる程度じゃ、店をここまでデカく出来ない…

そう思った。

真相は知らない。

この店に僕がゴトを仕掛けた事は、サンゾク以来一度も無い。

ちなみに静岡の海賊にも少し触れておく。

脇坂の若い衆に聞いた事がある。

「相変わらず客いないけど、一度も店が閉まったりはしてないよ」

やっぱり…

あの睨みの怖い部長が、海賊のグループの中にいれば、カード会社の追究ぐらい睨みでかわすだろう。

怒った顔を思い出すと、今でも震えてしまう。

結果、海賊のオーナーは僕達を使い、儲けだけを手にした事になる。

僕達ともスパッと手が切れた。

それは全て、怖い顔の部長の、正義のおかげでは無かっただろうか。

僕は小さく勝って、大きく負けたような気分である。

負けてないやい!!

まだリュウとハツコをサンゾクに残して、僕だけサンゾクから撤退した時期の事である…

その頃は婆さん達とスネ夫の店に行くのが日課になっていた。

しかしスネ夫の店も少し雰囲気が変わり始めていた。

一番の違いは、スネ夫の店に入り込むゴト師の数が増えていた事である。

僕達の知り合いのゴト師では無い。

スネ夫の店は、元々とても変造カードゴトがやり易かった。

当然のように他のゴト師もそう思う。

見逃している匂いを、ゴト師達は敏感に嗅ぎつける。

限りなく犬に近い。

捕まりそうになるとキャィンキャィンと泣きながらシッポを丸めて逃げる所なども似ている。

当然、犬なので縄張り争いが起こる事もある。

負ければハウス犬では無く、ノラ犬になる。

この時期のリュウやハツコはサンゾクのハウス犬である。

そこを飛び出した僕はノラ犬である。

飢えている…

しかし外の世界にも僕を迎えてくれるスネ夫ハウスがあった。

出来れば飼い犬が良いのである。

外は寒いのである…

スネ夫ハウスを、追い出される訳には行かない。

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