偽造・変造カード37

サンゾクの、一次閉店を向かえた日の夜に、いつもの焼肉屋で小池に会った。

小池は、サンゾクをクビになってから、五ヶ月経つのに、今だに仕事をしていない。

毎晩のようにローンのセルシオに乗って、キャバクラ通いをする小池は、少し太ったように見える。

「お前仕事は?」

「しないですよ。 兵隊いますから」

そう小池は言った。

小池は僕からの変造カードの仕入れ枚数を、一日100枚から150枚に増やしていた。

小池の月の儲けは百三十万円程である。

兵隊とは、変造カードを小池から買って行くゴト師の事であろう。

「カード終わるぞ。少し考えろよ」

言っても無駄な事を知りながら、僕はまた小池に言った。

「終わったら、なんか無いですか?」

「無いよ… 僕だってやめるし」

小池との付き合いを終わらせる時の為に、そう言った。

完全に自分では打たずに、ピンハネで遊んで暮らす小池が嫌いであった。

小池に昨日のハーネスゴトのアガリを渡した。

「これでハーネスの金は終わりな」

そう言って渡した金額は十万円である。

「なんでこんなに有るんですか?!」

小池は驚いて言った。

これでも半分にゴマかしてある。

昨日、良夫ちゃんとゴキブリで換金した金額は、八十万円程である。

良夫ちゃんが五十万ちょっとに、残りがゴキブリである。

結局大当たり100回は出なかった。

あと10回の所で時間切れとなった。

僕が、あと、1、2時間早く台に頼らないセットをやらせていれば届いただろう。

どこか残念であった。

小池に渡す金額をゴマかしたり、ゴキブリの半金を足して、良夫ちゃんに渡した金額は三十万円程である。

「毎日、これが良いですね〜」

これが良夫ちゃんのハーネスゴトを終えた時の感想であった。

僕は懲りた…

毎日やったらハゲる…

顔に全く生気が無くなっていたゴキブリは、四万円程を握りしめて帰って行った。

お金は30%の半分をきちんと渡した。

もう来ないで良いぞと言う積もりでいたが、言えず仕舞いに別れた。

しかし次の日にゴキブリが、僕の所に来る事は無かった。

朝早くゴキブリから電話があった。

「悪いんだけど、組で新しいシノギ任されたんだよ… だからまた今度やらしてくれないかな?」

「分かった… 負けんなよ。また今度な」

謝り続けるゴキブリに、気にすんなと言って電話を切った。

僕は寝ぼけていた…

少しして目がハッキリ覚めたら腹がたった。

脇坂ビビラらせようかと一瞬考えた。

あんなヘボを根性あるとか言いやがって…

僕はこの時、ゴキブリとの付き合いは、これで終わりだと思っていた。

しかし、このザコキャラが、僕の未来を劇的に変える始まりの男である。

サンゾクに手伝いに来た五人組は、仕事らしい仕事はしなかった。

気になっていた換金の時も、呆然とした店長が、大人しく景品を二人に渡したと言う。

仕事はしなかったとは言え、彼らにも払う物は払わなければならない…

ご飯を食べさせてゴマかそうとしたが、余計な払いが増える結果になった…

仕方ないので小池に渡す取り分からゴマかして渡した。

二十万円の所が、十万円になった小池は気付かずに喜んでいる。

働きの無かった小池には充分だ…

僕はこの日を境に小池と直接会う事を避けた。

小池の兵隊が捕まれば、芋づる式に僕まで来る危険が小池には感じられた。

ヘタレの巻き添えはお断りである。

それほど周りのホールでは、捕まるゴト師が増え始めていた。

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