偽造・変造カード35

ゴキブリが駄目になると分かった時、僕は他の方法を思いついた。

予定よりゴキブリが潰れるのが早いせいである。

妄爺の店で引き抜いた、使える奴ら五人を、日当一万で呼び寄せた。

やらせる事は偽のギャラリー。

見物者である。

完全に負けを認めたゴキブリが、やめて良いかと聞いて来た。

「ダメだ。セットが出来ないならやらなくても良いからそのまま打ち続けろ。普通に打つなら出来るだろ?」

負け犬が吠えた。

「なんでだよ!意味ねーだろ!!」

「良夫ちゃんが打ち終わるまでやめなかったら、僕の取り分は許してやるよ。どっちでも良いぞ。良夫ちゃんに半分持ってかれるんだから、稼いでおいたらどうだ…」

うんと言え…

ゴキブリに席を立たれたら台を調べられる…

もう一つのゴキブリの使い道は、店員の引き付けだ…

ヘボヤクザにはお似合いだ…

断ったら許さん…

ゴキブリは考えているようであった。

こちらの弱みを見せる訳には行かない…

「それぐらいも出来ねーのかよ!とっとと決めろよ!!」

僕も吠えた。

「分かったよ… やるよ…」

それで良いんだ…

抵抗するな。

夕方5時の段階でゴキブリが負けを認めた。

この時既に、箱数でも良夫ちゃんが抜いていた。

機械のようにセットを繰り返す良夫ちゃんに比べ、ゴキブリは何度もセットをためらった結果である。

残り時間は、良夫ちゃんに頑張って貰うしか無いと思った。

リュウが休憩で僕の所に来た。

「良夫ちゃん凄いアルヨ!玉いっぱい!でも主任が後ろに立ってるよ…」

マークは良夫ちゃんに変わっていた。

良夫ちゃんの戦いが始まる。

あと少し経てば助けてやれる…

そこまで頑張れと思っていた。

呼び寄せた5人に良夫ちゃんを囲ませる。

そして大騒ぎで応援させる。

店員が良夫ちゃんを止めようとしたら、キチンとした理屈で阻止させる。

周りのお客さんも味方に付けてやる…

そこから台に頼らないセットを掛けさせる。

連チャンのスピードを上げる。

あからさまなセットでも誰にも止めさせない。

限界までいける!

そう僕は願った。

少しすると五人が到着した。

作戦を話すとみんな笑っていた。

「一万円って安くないですか?」

そう一人に言われた。

やかましい…

充分だ…

僕にたかるな!

「クビなりたいの?」

そう言ってみた。

結果一万円で納得した。

僕の勝ちである…

やる事は簡単なのである。

良夫ちゃんの周りを囲んで、オジサン凄いね〜と言い続けるだけだ。

止める店員がいたら、出したらいけねぇのかよ!と騒ぐだけだ。

本音を言えば500円でやらないかなと思っていた…

泣く泣く一万円にしてやったのだ…

感謝しろ!

欲たかりども!

ん?

作戦を指示して、すぐにホールに全員送り込んだ。

彼らには変造カードを持たせている。

一枚1200円だ…

少し回収したかった…

良夫ちゃんに台に頼らないセットをするように電話で指示した。

時短中は下の小口チャッカーがチョコチョコ開くので、セット自体は変わらないが少し面倒である。

三個チャッカーに入れる所が、普通に打つと沢山入ってしまう。

その程度の事である。

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