偽造・変造カード34

無理矢理僕を止めて、ゴト師として証明が出来なければ、警察は困った事になる。

その頃ギャラリーは僕の周りに沢山いるだろう。

どちらの味方をするだろうか?

警察と店か?

僕は違うと考えていた。

パチンコをやる人間は、パチンコ屋の事を、心のどこかで怨んでいるのでは無いか?

勝ち続けている人など、ほんのひと握りだろう。

多くの人は、結果負け続けている。

なけ無しのお金を握りしめ、負けて帰る時の絶望感…

給料日直後の、思わぬ大敗…

使うはずでは無かったのに、激熱演出に踊らされ、終わって見れば全てが無い…

自分が病気だと気付きながらも、やめられないパチンコ…

勝つ時チョッピリ…

負ける時ガッツリ…

こんな店燃えちまえ!

潰れろ!

金返せ!

泥棒野郎ー!!

理屈は間違っているが、そう思った事が一度も無いだろうか…

その鬱屈した気持ちを抱えた人達が、積み上がるドル箱を見る。

何かに期待しないだろうか?

期待などでは無くても、どこまで出るかの興味に包まれないだろうか?

ギャラリーが味方に付けば換金もスムーズに行くのでは無いか?

拒否されるか?

店側が換金を拒否すれば裁判で勝つしかない。

しかしソコまでは行かない。

ギャラリーが敵でも、サンゾクでの換金は簡単である。

僕の楽しい妄想を、邪魔する電話が、ゴキブリから度々掛かるようになった。

「なに?」

うぜぇ野郎だな…

「ダメだ!俺だけビッチリ張り付かれてんだよ!」

そうゴキブリは言った。

俺だけ?

なんでだ?

予想と逆だった。

僕は不思議に思い聞いた。

「良夫ちゃん出してないの?」

「出してるよ!追い付かれそうだよ!でも打ってらんねーよ!」

なんでだよ…

良夫ちゃんなんかやってんのか…

「…打てねえって言ったって良夫ちゃん打ってんだろ。今やめたら、まだ罰金になるよ。それで良いなら勝手にやめな。つうか良夫ちゃんより先にやめるってどうなの?恥ずかしくねえの?お前イジメてたじゃねーかよ」

「でも俺だけ張り付かれてんだから、しょうがねぇだろ!」

甘ったれんな…

僕はお前の保護者じゃない…

泣けば助けると思ってんのか?

「だから好きにしろよ。今の出玉で良夫ちゃんより前にやめたら罰金は必ず取るからな。お前が持ってないなら脇坂から取るよ」

「なんでだよ!ふざけんなよ!ちくしょー!やりゃ良いんだろ!やりゃ!」

そうだよ…

やりゃ良いんだよ…

まだまだ始まったばっかりだ…

どうしても気になった。

「良夫ちゃん、何で張り付かれて無いか分かる?」

「知らねーよ!あいつ寝ながら打ってんだよ!店員が話し掛けても返事もしねーよ!」

へ?

寝てる…

寝るは全く思い付かなかった。

寝るボケ老人…

天才かも…

馬鹿と天才紙一重…

この時は納得した。

しかし理由は違う所にあった。

終わった時に、僕は良夫ちゃんに聞いた。

「なんで寝ながらやってたの。上手いアイデアだね」

「アイデア? 違いますよ」

ん?

違う?

もしや…

「ホントに眠かったの?」

「違います。家で、秒、数える練習した時、目をつぶって練習したから、その通りやれば出来るかと思って、やったら出来ました。だから時計は見なかったです。店員に話しかけられて、秒が分からなくなるのが大変でした」

やっぱり良夫ちゃんは馬鹿だった。

単なる偶然…

もう少し早く、この【忍法偶然】を僕が知っていれば、もっと出せたと後悔した。

それでも良夫ちゃんは、寝たフリが使えると、途中で気付いたそうである。

そんな事とは知らない僕は、ゴキブリからの電話に、喝を入れる事に集中していた。

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