偽造・変造カード27

またやられた…と言うのは、妄爺が刑務所を出た直後の事を言っていた。

前回妄爺が刑務所を出た時、貯金が四千万円あったと言う。

カタギになる為に、そのお金で、東京の赤坂に高級ブティックを開いたそうである。

東京の赤坂と言えば一等地である。

その時も組の名前入りの花輪がズラリと並んだ。

お客さんも沢山来たと言う。

それらは全て、姉さんと呼ばれるヤクザ絡みの女達であった。

洋服を一度に買って行く金額も高額である。

しかし、喜んでいられたのは一ヶ月ぐらいであった。

付き合いとミエで一度は大金を使って行ったが、姉さん達が、妄爺の店を訪れる事は激減して行った。

ならば普通のお客さんと思う所だが、ヤクザが経営すると知られたお店に、来るお客さんは居なかった。

妄爺は商売も下手だったのだろう。

半年で店は潰れた。

やはりただの間抜けハゲジジィであった。

しかし雀荘は好運な事に違った。

客が途切れる事はなく、毎日の売上も結構な額にのぼった。

二ヶ月目には僕が出したお金は全額返済された。

その客の中や、客の連れの中には、妄爺の予想通り、変造カードをやりたがる男達が沢山いた。

その中から使える奴と使えない奴をふるいに掛けた。

数日一緒に変造カードをやって廻ればすぐに分かる。

基準は怖いと口に出すか出さないかだけだった。

それが例え、やせ我慢でも、震えていても構わない。

それでしか僕は人が計れない。

捕まる可能性を感じ取れない。

少しドコかが歪んでいるのである。

使えると思った奴にはカードを安く卸した。

使えないと思った奴には高く卸した。

ただの鴨である。

そのテスト期間中の新人と、ゴキブリを連れて三人でホールを廻った。

ゴキブリの僕に対する態度は対等である。

エラーカードの解除のやり方を教えて三人でホールに入った。

もちろん、やり易い店を選んでいる。

新人はすぐに普通に打ち出した。

しかしゴキブリは、中々カードを入れずにホールを歩き廻る。

怖いのか?

近づいて声を掛けた。

「なにやってんの?早くやりなよ」

「分かってるよ。良い台が無いか探してんだよ」

そうゴキブリは言った。

嘘こけ…

このヘタレが…

「出来ねえなら車に居て良いよ」

生ごみ野郎…

燃えもしない…

「いや、出来るよ」

そうゴキブリが言った。

じゃあとっととやれよ…

捕まっちまえ、バカ…

ゴキブリは無理してサンドにカードを入れた。

完全に動きが不審者に見える。

すぐ横に座って僕は言った。

「キョロキョロすんなよ。誰が来ても前だけ見てりゃ良いよ。捕まりそうになったら助けてやるから」

「分かった…」

そう言ったゴキブリのハンドルを持つ手は震えていた。

こいつしょーがねぇな…

何が分かっただよ…

素直なヤクザなんて可愛くもなんともねぇよ。

強がりぐらい言え!

すぐに僕はゴキブリから離れた。

巻き添えはお断りである。

当然助ける気などサラサラない。

余りビビられて、やりやすい店が潰れるのが嫌だった。

一時間もすると、ゴキブリがまたホールを徘徊し始めた。

通りすがりに、僕を見た目が、助けてと言っている。

コノ!

ホールの店員に、疑っている動きは皆無である。

ゴキブリを外に呼び出して聞いた。

「どうした?」

「なんか店員に目ぇ付けられたみたいだよ…」

有り得なかった。

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