偽造・変造カード21

小池と僕は二百万円程の取り分である。

彼は完全に浮かれていた。

ハーネスの取り付けも、すっかりナメ切って、遅刻したりしているようである。

小池が言う。

「リュウさん根性無いですよ。出して良いって言うのに、出さないんですよ」

「おい、調子にのんなよ… お前、永遠に捕まらないと思ってんのか?お前が捕まった時に、僕達の事を喋ったら覚悟しろよ。必ず痛い目にあわせるからな」

そう僕は脅かした。

そして小池が捕まった場合、どこからハーネスを買ったのかなどを聞かれた時の、答え方を教えた。

「他の事はどんなにツジツマが合わないって言われても喋るなよ。お前の罪が増えるからな。返事に困るような事を聞かれたら、知らない、忘れたを繰り返せ。リュウにはお前の好きなように出すように言っとくから… ただ捕まる可能性は上がるぞ」

そう最後に釘を刺した。

少しは状況が分かったのか、小池はそれからは抜く金額を上げろとは言わなくなった。

二日後…

言いたくても言えなくなった…

二ヶ月目に入ってすぐの日、小池が店側に捕まった。

小池が店側に捕まった事は半日後に分かった。

この日は、取り付けの日ではなく、普通の日である。

リュウが言うには、昼過ぎになっても小池がホールに出ていなかったと言う。

ほとんど無い事だったがリュウは構わず打ち子を入れた。

少しすると打ち子がセットが掛からないと携帯で言って来た。

この段階でリュウは異変を感じた。

もう一台、打ち子に試させるかと思ったが、バレていた場合、打ち子がマズいと思い、試させる事なくそのまま帰らせた。

自分は何食わぬ顔で変造カードをハツコと打ちながらホールに残った。

なぜか遅番の店長がホールを巡回している。

リュウは小池が捕まった事を確信したと言う。

更には自分も防犯カメラで監視されていると判断して、僕と連絡も取らずに、夕方まで普通に変造カードを打ち続けた。

慌てて携帯を何度も使えば、監視されていた場合、打ち子を入れていたのが自分だとバレると判断した。

リュウは小池の心配よりも、自分達の変造カードが打てなくなる方を心配したのである。

リュウの中では、完全に割り切られている。

夕方ハツコと食事に出た時、僕に初めて電話をして来た。

僕も状況を聞いて小池が捕まった事を確信した。

リュウが捕まっていない以上、小池は僕達とのつながりは喋っていないと分かった。

変造カードを、この先も続けるなら、リュウ達をホールに戻して普通と同じように打たせるしかない。

リュウはそれが良いと言う。

店長に何か言われたら僕に連絡しろと伝えて電話を切った。

小池の為に出来る事は、いくつか思い付いたが僕は何もしなかった。

損をするからである。

自首する馬鹿なゴト師はいない。

そう言う事である。

僕にサンゾクの誰かから、電話があるだろうなと思っていた。

当然店側は僕が主犯と考える。

小池一人で出来る事では無い。

しかし待っていたが誰からも電話は来なかった。

夜遅くなって小池から電話が掛かって来た。

「バレました〜 クビになっただけです!」

そう小池は言った。

「お疲れさん…」

それしか僕には言えなかった。

その夜小池と僕は二人だけで会った。

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