小池と僕は二百万円程の取り分である。
彼は完全に浮かれていた。
ハーネスの取り付けも、すっかりナメ切って、遅刻したりしているようである。
小池が言う。
「リュウさん根性無いですよ。出して良いって言うのに、出さないんですよ」
「おい、調子にのんなよ… お前、永遠に捕まらないと思ってんのか?お前が捕まった時に、僕達の事を喋ったら覚悟しろよ。必ず痛い目にあわせるからな」
そう僕は脅かした。
そして小池が捕まった場合、どこからハーネスを買ったのかなどを聞かれた時の、答え方を教えた。
「他の事はどんなにツジツマが合わないって言われても喋るなよ。お前の罪が増えるからな。返事に困るような事を聞かれたら、知らない、忘れたを繰り返せ。リュウにはお前の好きなように出すように言っとくから… ただ捕まる可能性は上がるぞ」
そう最後に釘を刺した。
少しは状況が分かったのか、小池はそれからは抜く金額を上げろとは言わなくなった。
二日後…
言いたくても言えなくなった…
二ヶ月目に入ってすぐの日、小池が店側に捕まった。
小池が店側に捕まった事は半日後に分かった。
この日は、取り付けの日ではなく、普通の日である。
リュウが言うには、昼過ぎになっても小池がホールに出ていなかったと言う。
ほとんど無い事だったがリュウは構わず打ち子を入れた。
少しすると打ち子がセットが掛からないと携帯で言って来た。
この段階でリュウは異変を感じた。
もう一台、打ち子に試させるかと思ったが、バレていた場合、打ち子がマズいと思い、試させる事なくそのまま帰らせた。
自分は何食わぬ顔で変造カードをハツコと打ちながらホールに残った。
なぜか遅番の店長がホールを巡回している。
リュウは小池が捕まった事を確信したと言う。
更には自分も防犯カメラで監視されていると判断して、僕と連絡も取らずに、夕方まで普通に変造カードを打ち続けた。
慌てて携帯を何度も使えば、監視されていた場合、打ち子を入れていたのが自分だとバレると判断した。
リュウは小池の心配よりも、自分達の変造カードが打てなくなる方を心配したのである。
リュウの中では、完全に割り切られている。
夕方ハツコと食事に出た時、僕に初めて電話をして来た。
僕も状況を聞いて小池が捕まった事を確信した。
リュウが捕まっていない以上、小池は僕達とのつながりは喋っていないと分かった。
変造カードを、この先も続けるなら、リュウ達をホールに戻して普通と同じように打たせるしかない。
リュウはそれが良いと言う。
店長に何か言われたら僕に連絡しろと伝えて電話を切った。
小池の為に出来る事は、いくつか思い付いたが僕は何もしなかった。
損をするからである。
自首する馬鹿なゴト師はいない。
そう言う事である。
僕にサンゾクの誰かから、電話があるだろうなと思っていた。
当然店側は僕が主犯と考える。
小池一人で出来る事では無い。
しかし待っていたが誰からも電話は来なかった。
夜遅くなって小池から電話が掛かって来た。
「バレました〜 クビになっただけです!」
そう小池は言った。
「お疲れさん…」
それしか僕には言えなかった。
その夜小池と僕は二人だけで会った。
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