取り付ける日の朝8時に、僕とリュウはパチンコ屋の駐車場に入って来る車の見張りをしていた。
誰かが来たら小池に連絡するだけの仕事である。
この日は、今まで付いていたパ〇フルのハーネスは触らないで、新しく大工の〇さんにハーネスを二台付ける事になった。
最初からいろいろやらせ無い方が良いと思った。
小池が店に入って15分程すると電話が来た。
「成功しましたよ!!」
僕が震えて取り付けた、パ〇フルが無駄になった瞬間であった。
小池に負けた…
少し力が抜けていた。
8時半を過ぎると主任が店に着いた。
小池は全てを終わらせている。
昼を過ぎても気付かれた様子はない。
電話で小池が言って来た。
「出して下さいよ!!」
彼も取り付けに成功して興奮している。
この日は小池のリクエストに答えて二台を稼動させ、一台から十万円程づつ抜いた。
大工の〇さんは、サンゾクで唯一お客さんが付く機種であった。
いくら出しても不自然さは全く見られない。
僕は、頭の片隅にあった防犯カメラの録画の事は、一切口にしなかった。
二週間経っても順調にハーネスゴトは続いている。
平均すると一日、十五万円程を出し続けている。
このペースで行くと月に四百五十万円サンゾクから抜く事になる。
二回目のハーネス取り付けの時に小池とリュウに言った。
「月に四百五十万はまずいよ。出し方の問題じゃ無いだろ。サンゾクの儲けのほとんどじゃねーの」
小池が強気に言い返す。
「大丈夫ですよ。店長達がおかしいと思ってるなら俺にも言って来ますから。それから減らすんでも良いですし」
リュウは知らん顔をしている。
小池は、捕まると、この時確信した。
二回目の取り付けも上手く行った。
僕は駐車場の見張りにも行かなかった。
見張りはリュウとハツコに任せた。
捕まるのは取り付けの時ではないと思っていた。
出玉のデーター的に疑われた時であろう。
リュウには、ホール内で絶対に打ち子に接触するなと伝えた。
「分かってる」
そうリュウは言った。
小池の取り分は二回目の取り付けが成功した時、25%に、予定より早く上げた。
危険が小池だけに、のし掛かっていた。
四回目のハーネス取り付けが成功した。
この時には、取り付けるハーネスの数も増やして、一台辺りから出す金額を押さえるようにしていた。
しかし、一日の抜く金額は、トータルで上げている。
平均二十万円を越えていたように記憶する。
リュウに僕は言った。
「やり過ぎだろ。絶対捕まるぞ。お前だって分かってんだろ」
「金額下げようとしても小池が出せ出せ言うんだヨ」
「捕まった方が損するぞ。小池は馬鹿だから言う事聞いてないで、お前が調整しろよ…」
「分かったヨ」
そうリュウは答えて、金額を十五万円程に落とした。
リュウにも、打ち子の手配で、しがらみが出来ている。
これ以上は言えない。
しかし僕にもリュウにも小池が捕まる事は分かっていた。
助かる方法は、やめるだけである。
止めようと思えば僕には簡単に止められた。
「ヤバいと思ったらすぐやめて良いよ」
そう小池には何度か言った。
しかし、止めはしなかった。
それは今でも後悔している。
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