店側の対応にもよるが、めぐり巡ってお客さんの財布を直撃する。
読者を敵に廻す可能性が高い、僕の最初の一撃であった…
ゴトとは、全てそう言う物である。
すぐに両替して、少し時間を空けて角台に座った。
ダメだとは分かっていたが欲が出た。
確変を狙う…
セット終了後すぐに確変大当たりが来た。
ここからは単純に台任せである。
引きが弱ければすぐ終わる。
連チャンが五回を越えた時、冷や汗が流れ始めた。
やべぇ…
止まらねぇ…
様子を見に来たリュウが、僕をジトッとした目で見ると立ち去った。
見に来るんじゃねーよ…
ウザい奴め…
次に小池が見に来て親指を立てて喜んでいる。
分け前の計算をしているのであろう。
カメラの録画を、あんなに嫌がっていた癖に…
指立てるって何考えてんだろ?
睨んでやったらすぐ消えた。
連チャンは10回程で止まり、動作確認は終了した。
全て成功と言う事である。
この日サンゾクの打ち込みは、誰一人捕まる事なく8時に終了した。
三ヶ月に満たない打ち込みで、打ち子の稼ぎは一人七百万円程だったろうか。
僕に安く使われた結果である。
それでも彼らはサンゾクが終わる事を残念がった。
リュウが言った事と同じように、金額を下げてサンゾクで打てないかと言う奴もいた。
それら全てを退けた。
「二度とサンゾクに来るなよ。来たら僕との喧嘩だと思え。知り合いに来させたら店員に捕まえさせる。そいつを締め上げてお前らの名前が出たら覚悟しろ」
そう脅かした。
縄張り争い…
先程までの仲間が簡単に敵に変わる。
カード会社に目を付けられている以上、人数は増やしたくない。
リュウやハツコがまずい。
全ては自分の都合を優先させる。
決して仲良しこよしの集団にはなれない。
全員が自分の安全と利益を優先に考える。
ゴトの世界とは、そう言う世界である。
さらに深夜になって店員達を集めた。
サンゾクの打ち込みが、今日で終わった事を告げるためである。
月の十万とリュウ達の面倒を頼んで、一人二十万円渡した。
先々サンゾクにカード会社の手が入る可能性は高い。
警察が動く可能性もある。
僕達の事を喋ると罪が増す事を教えた。
更には報復もあると匂わせる。
口止め料込みの二十万円であった。
このお金が僕から店員に渡す最後のお金である。
みんなと別れて、小池だけすぐ呼び戻した。
いつもの焼肉屋に席を変え、リュウと三人である。
リュウは取り付けの時の小池の動きに対して怒っていた。
僕は、怒りよりも、小池の取り分が減らせる事に喜んでいた。
小池は席に着くなり言い訳を始めた。
鍵を持たない自分が、他の店員にお客さんの台を開ける仕事を頼まれて、仕方なくトイレに逃げたと言う。
喋れば喋る程、小池は墓穴を掘った。
そんな言い訳は通さない…
恐怖を外に出したお前は貧乏で良い…
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