リュウの言った事は、嘘じゃないと理解した。
僕は、持っていた鍵を地面に落とすと、そのまま店を出た。
不思議と怒りは、わいて来ない。
少し小池が哀れに思えた。
外に出てリュウとファミレスに向かう。
「小池ワ?」
「いたよ。鍵返して来た。それより台の動作確認しなきゃダメだろ」
そう僕は聞いた。
パ〇フルのハーネスは単発、確変が選べる。
「やめた方が良いんだけど… どうしてもやるなら、単発一回だけにした方が良いヨ」
リュウは、玉抜きの列以外でパチンコを打つと主任に不自然に思われる。
僕は普段から玉抜きの列以外で打っているので、出してもおかしくない。
取り付けた人間が試し打ちなど絶対にしてはいけない。
バレたら言い訳など、何ひとつ出来ない。
しかし自分で打ちたくて仕方なかった。
ホールでのセット打ちは初体験である。
「一回づつなら平気だろ」
そう言って、昼から打つ事に決定した。
ここで初めてオーケーマークの意味を知る。
苦笑いしか出て来ない。
台の中の歪みを伝えた。
リュウは裏ロム専門で、ハーネスの取り付けはした事が無いと言う。
今更の告白…
手間取った事を言うと、笑いながらリュウは言った。
「平気だったカ?誰にも見られてないカ?」
あれだけ怖がり右往左往しておきながら僕は強がった。
「平気だ。簡単だったよ…」
周りに僕の正体を知られたく無かった。
サンゾクで捕まるなら、社長を脅かしてウヤムヤにする事は簡単だった。
それでも僕は怖がった。
走って逃げたり、取り押さえられる事が嫌でたまらない。
小池の恐怖が、誰よりも分かる、僕はヘッポコだった。
怖がる奴が大嫌いである。
まるで鏡の中の自分を見るようだからである。
12時過ぎにハーネス台のセットを開始した。
防犯カメラの録画が一週間分貯めてある以上、今日疑われる訳には行かない。
動作確認だけをして、一週間は放っておく事に決めていた。
単発大当たりで充分である。
へたに確変を引いて連チャンしたら大変である。
連チャンを止める方法も一応はある。
確変中に単発のセットを掛けるのである。
確変中は小口チャッカーがチョコチョコ開くので、セットが少し面倒であった。
普通は自然に出るに任せる。
最初にテストしたのは、気になっていた、上の配線が抜けなかった台である。
単発を狙ってセットを開始した。
セット終了後、数回転で単発大当たりが来た。
問題なしである。
変造カードを打ち込む事は、パチンコ屋に金銭的に被害を与えない。
カード会社が泣くだけである。
しかし、この時の単発はパチンコ屋に直接被害を与える。
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