偽造・変造カード13

リュウの言った事は、嘘じゃないと理解した。

僕は、持っていた鍵を地面に落とすと、そのまま店を出た。

不思議と怒りは、わいて来ない。

少し小池が哀れに思えた。

外に出てリュウとファミレスに向かう。

「小池ワ?」

「いたよ。鍵返して来た。それより台の動作確認しなきゃダメだろ」

そう僕は聞いた。

パ〇フルのハーネスは単発、確変が選べる。

「やめた方が良いんだけど… どうしてもやるなら、単発一回だけにした方が良いヨ」

リュウは、玉抜きの列以外でパチンコを打つと主任に不自然に思われる。

僕は普段から玉抜きの列以外で打っているので、出してもおかしくない。

取り付けた人間が試し打ちなど絶対にしてはいけない。

バレたら言い訳など、何ひとつ出来ない。

しかし自分で打ちたくて仕方なかった。

ホールでのセット打ちは初体験である。

「一回づつなら平気だろ」

そう言って、昼から打つ事に決定した。

ここで初めてオーケーマークの意味を知る。

苦笑いしか出て来ない。

台の中の歪みを伝えた。

リュウは裏ロム専門で、ハーネスの取り付けはした事が無いと言う。

今更の告白…

手間取った事を言うと、笑いながらリュウは言った。

「平気だったカ?誰にも見られてないカ?」

あれだけ怖がり右往左往しておきながら僕は強がった。

「平気だ。簡単だったよ…」

周りに僕の正体を知られたく無かった。

サンゾクで捕まるなら、社長を脅かしてウヤムヤにする事は簡単だった。

それでも僕は怖がった。

走って逃げたり、取り押さえられる事が嫌でたまらない。

小池の恐怖が、誰よりも分かる、僕はヘッポコだった。

怖がる奴が大嫌いである。

まるで鏡の中の自分を見るようだからである。

12時過ぎにハーネス台のセットを開始した。

防犯カメラの録画が一週間分貯めてある以上、今日疑われる訳には行かない。

動作確認だけをして、一週間は放っておく事に決めていた。

単発大当たりで充分である。

へたに確変を引いて連チャンしたら大変である。

連チャンを止める方法も一応はある。

確変中に単発のセットを掛けるのである。

確変中は小口チャッカーがチョコチョコ開くので、セットが少し面倒であった。

普通は自然に出るに任せる。

最初にテストしたのは、気になっていた、上の配線が抜けなかった台である。

単発を狙ってセットを開始した。

セット終了後、数回転で単発大当たりが来た。

問題なしである。

変造カードを打ち込む事は、パチンコ屋に金銭的に被害を与えない。

カード会社が泣くだけである。

しかし、この時の単発はパチンコ屋に直接被害を与える。

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