偽造・変造カード12

それでも小池から貰った恐怖は拭えない。

恐怖は間違いなく伝染する。

誰だって怖い。

それを必死に押さえているのに…

変造カードをやる時は、その日の体調や精神的な問題で怖かったり、全然平気だったりする。

それでも毎日打ち続ける。

そうしていないと恐怖に飲み込まれそうになる。

外に出さないだけで、僕は誰より怖がりなのである。

その後ハーネスの取り付けはスンナリ成功した。

多分30秒掛かっていない。

完璧だ!

そう思い扉を閉めた。

しかし、台から一歩離れて見た、液晶画面は、なぜか黒かった。

ん?

配線ミスッた?

違う!

電源入れてない!

クソッ!

慌てて鍵を取り落とした。

台を開けてスイッチを入れるだけなのに…

鍵を拾い顔を上げる。

台から離れた小池側の通路から、なぜか店員が歩いて来ていた。

カッと火がついた。

僕は、考える間もなく、店員に向かって歩きだした。

台は僕の左後ろ。

店員があと少し近づけばクビを振るだけで台の異変に気付く。

いや…

台枠のランプも消灯しているので、クビなど振らなくても、今この瞬間にも気づかれる。

咄嗟に僕は右手が痛いように、大袈裟に手首から先を振りながら、自分の手だけを見つめて店員に近付いた。

僕の視線と右手に釣られろ!

そう願いながら。

向かって来る店員に話し掛けても不自然では無い距離に近づいて、初めて店員の顔を見た。

店員の目が、僕の右手を見ている。

引っ掛かった!

台の方を見てない!

確信した。

「食事休憩札ちょうだい」

そう言いながら店員を台とは逆に向かせる為に回り込む。

記憶していた離れた台の台番号を伝え店員を追っ払った。

恐怖など消えている。

お前らなんかに負けるか!

そう思っていた。

店員の行き先を確認してパチンコ台に戻り鍵を捻る。

電源をオンにした。

全てがチグハグだった取り付けが終わり、時計を見ると10時15分であった。

あとは小池に鍵を返すだけで終わる。

リュウ側の通路に出ると、すぐ横でリュウが二人のお客さんと話しをしていた。

随分ギリギリの所で止めたな…

でも助かった…

またオーケーマークを出した。

その後、小池を探して店内をうろつくが、小池がいない。

なんかあったか…

振り返るとリュウが見ている。

近付いて聞いた。

「小池は?」

「見てない。終わったの?」

終わった事を告げ、台の確認をするように言った。

小池がいない…

とりあえず外に出てリュウを待つ。

少しするとリュウが店から出て来て言った。

「台は打ってみないと分からないけど、多分平気だよ。小池はトイレから出て来たアルヨ…」

嘘だろ?

信じられなかった。

ホールに入ると、小池が反対の通路から、ヘコヘコしながらこちらに向かってくる。

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