偽造・変造カード11

そこからは練習通り順調だった。

抜いた配線をポケットにしまい、ハーネスを出す。

今度は上からパチンコ台に嵌めて行く。

上が簡単にカチッとハマり、下も問題無くハマった。

もう一度、接続部分を確認して、パチンコ台の電源を入れる。

扉を閉める前に画面を確認すると、見慣れたデモ画面が、そこにはあった。

扉を閉めた。

成功である。

足元を見ると、上皿をアゴで押した時にこぼれた玉が、幾つか転がっていた。

30秒で取り付ける予定が、2分は掛かっている。

もう1台取り付ける気は既に全く無い…

やるとしても明日だな…

そろそろお客さんも来るだろうし…

そう自分に言い訳をして、リュウに伝える為に通路へ出た。

玄関口に、リュウがポツンと立ってコチラを見ていた。

上手く行った事をリュウに伝える為に、何気なく指でオーケーマークを作った。

しかし、このオーケーマークが失敗だった。

僕は知らなかったが、小池とリュウが決めた、打ち子に玉をばらまかせる合図であった。

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リュウは打ち子の列へと歩き出す。

あれ?

どこ行くんだ?

まさか…

勘違いしたのか…?

リュウを追いかけるタイミングが遅れた。

打ち子の列に曲がるリュウ…

やめろよ…

勘弁して下さい…

反対側の通路を見ると小池が立っている。

恐怖に引き攣る小池と目が合った。

その目を見た瞬間、僕も恐怖に包まれた。

数秒後…

玉を箱ごとブン撒いた音が、ホール内に響き渡った。

マジですか!?

そう思いながらも反射的に体が動いた。

小池に次をやる事を伝える為に指を一本立てて見せる。

かすかに頷いた。

僕は、パ〇フルの列に向かいながら、取り付けをやめる言い訳だけを考えていた。

お客さん座ってろ!

店員こっちに来てろ!

誰かいてくれ!

やめる理由が欲しい…

怖いを理由には出来ない…

誰も居なかった。

マジで…

やるのか…

あれをまた…!

決めていた反対側の角台へ行く時間的余裕がないと思った。

心臓が早鐘のように鳴る。

リュウの野郎ー!

死ね!

絶対、強制送還させてやる!

手前の角台に座り鍵を回した。

扉を開く。

間違って、電源を切らずに配線を抜こうとした。

先程とは明らかに違う精神状態である。

ギリギリで電源に気づいた。

手順、手順と自分に言い聞かせながら電源をオフにする。

配線の下を簡単に抜いて、上に取り掛かる。

今回は上も抵抗なく簡単に抜けた。

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