そこからは練習通り順調だった。
抜いた配線をポケットにしまい、ハーネスを出す。
今度は上からパチンコ台に嵌めて行く。
上が簡単にカチッとハマり、下も問題無くハマった。
もう一度、接続部分を確認して、パチンコ台の電源を入れる。
扉を閉める前に画面を確認すると、見慣れたデモ画面が、そこにはあった。
扉を閉めた。
成功である。
足元を見ると、上皿をアゴで押した時にこぼれた玉が、幾つか転がっていた。
30秒で取り付ける予定が、2分は掛かっている。
もう1台取り付ける気は既に全く無い…
やるとしても明日だな…
そろそろお客さんも来るだろうし…
そう自分に言い訳をして、リュウに伝える為に通路へ出た。
玄関口に、リュウがポツンと立ってコチラを見ていた。
上手く行った事をリュウに伝える為に、何気なく指でオーケーマークを作った。
しかし、このオーケーマークが失敗だった。
僕は知らなかったが、小池とリュウが決めた、打ち子に玉をばらまかせる合図であった。
リュウは打ち子の列へと歩き出す。
あれ?
どこ行くんだ?
まさか…
勘違いしたのか…?
リュウを追いかけるタイミングが遅れた。
打ち子の列に曲がるリュウ…
やめろよ…
勘弁して下さい…
反対側の通路を見ると小池が立っている。
恐怖に引き攣る小池と目が合った。
その目を見た瞬間、僕も恐怖に包まれた。
数秒後…
玉を箱ごとブン撒いた音が、ホール内に響き渡った。
マジですか!?
そう思いながらも反射的に体が動いた。
小池に次をやる事を伝える為に指を一本立てて見せる。
かすかに頷いた。
僕は、パ〇フルの列に向かいながら、取り付けをやめる言い訳だけを考えていた。
お客さん座ってろ!
店員こっちに来てろ!
誰かいてくれ!
やめる理由が欲しい…
怖いを理由には出来ない…
誰も居なかった。
マジで…
やるのか…
あれをまた…!
決めていた反対側の角台へ行く時間的余裕がないと思った。
心臓が早鐘のように鳴る。
リュウの野郎ー!
死ね!
絶対、強制送還させてやる!
手前の角台に座り鍵を回した。
扉を開く。
間違って、電源を切らずに配線を抜こうとした。
先程とは明らかに違う精神状態である。
ギリギリで電源に気づいた。
手順、手順と自分に言い聞かせながら電源をオフにする。
配線の下を簡単に抜いて、上に取り掛かる。
今回は上も抵抗なく簡単に抜けた。
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