ガチャリと台を開け、パチンコ台の中を確認する。
よし 行ける…
練習した台と全く同じ形状だ…
冷静に手順を思い出す。
まず電撃をオフにした。
相手側の上と下の配線を抜く…
下からだ…
慌てるなと自分に言い聞かせる。
配線が切れたりしないように下の配線をソオっと抜いた。
抜けた…
次は上…
抜くためのフックを摘みながら、上の配線を軽く引っ張った。
あれ?
抜けねー
少し力を込めてもう一度引っ張る。
抜けねー !
なんでだ??
何かがおかしかった。
なんだ?
よく見ろ…
分かった!
練習の時と違う!!
玉が、ある!
練習の時には無かった玉が、台の中の、頭の辺りにある上皿の上に、沢山乗っていた。
台の全体にも玉が貯留している。
雪ちゃんのマンションでハーネス取り付けの練習をした。
その時は、音がうるさいと近所迷惑になると思い、玉は台に乗せずに練習していた。
リュウも何も言わなかった。
関係ないのかな…?
しかし本番では、それが原因なのか、配線が抜けない。
でも、あきらかな違いは玉だけのように見える。
僕は機械が苦手だ。
諦めるか?
引くも進むも時間的には変わらないか?
判断に迷う…
もう一度引っ張った。
抜けない!
僕の顔から血の気が引くのが分かる。
冷静になれ!
笑え、笑えと誰かが耳の奥で言っている。
少し声に出して、無理矢理笑ってみた。
引き攣る頬…
ハタから見たらマヌケである。
そのまま台の中の上皿辺りをじっくり見る。
ん?
歪んでないか?
見えづらいが、玉の重みで歪んだ台の中の上皿が、抜く配線の一部に少し引っ掛かっているように見える。
コイツか?
中の上皿を下から少し押し上げてみる。
コイツだ!と気付いた。
上皿を力いっぱい押し上げながら抜けば良い…
しかし、手が足りない…
左手は抜く為のフックをツマむ。
右手で抜く。
上皿誰が押し上げる?
肘で押そうとしたが体制的に無理であった。
ジタバタする自分がおかしくなった。
なにしてんだ僕…?
この時笑いは本物になった。
どうでも良くなって、頭で押したり、アゴで押したり色々試す。
人が来たら、いくつか考えていた言い訳は通じないなと思うと、おかしくて仕方なかった。
諦めると言う選択は、頭から消し飛んでいた。
そのうち何が良かったのかスポッと配線が抜けた。
ヨッシャー!
イケるイケる〜
プレッシャーで狂って、怖い物知らずになった僕がいた。
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