偽造・変造カード10

ガチャリと台を開け、パチンコ台の中を確認する。


よし 行ける…


練習した台と全く同じ形状だ…


冷静に手順を思い出す。


まず電撃をオフにした。


相手側の上と下の配線を抜く…


下からだ…


慌てるなと自分に言い聞かせる。


配線が切れたりしないように下の配線をソオっと抜いた。


抜けた…


次は上…


抜くためのフックを摘みながら、上の配線を軽く引っ張った。


あれ?


抜けねー


少し力を込めてもう一度引っ張る。



抜けねー !


なんでだ??


何かがおかしかった。


なんだ?


よく見ろ…


分かった!


練習の時と違う!!

玉が、ある!

練習の時には無かった玉が、台の中の、頭の辺りにある上皿の上に、沢山乗っていた。

台の全体にも玉が貯留している。

雪ちゃんのマンションでハーネス取り付けの練習をした。

その時は、音がうるさいと近所迷惑になると思い、玉は台に乗せずに練習していた。

リュウも何も言わなかった。

関係ないのかな…?

しかし本番では、それが原因なのか、配線が抜けない。

でも、あきらかな違いは玉だけのように見える。

僕は機械が苦手だ。

諦めるか?

引くも進むも時間的には変わらないか?

判断に迷う…

もう一度引っ張った。

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抜けない!

僕の顔から血の気が引くのが分かる。

冷静になれ!

笑え、笑えと誰かが耳の奥で言っている。

少し声に出して、無理矢理笑ってみた。

引き攣る頬…

ハタから見たらマヌケである。

そのまま台の中の上皿辺りをじっくり見る。

ん?

歪んでないか?

見えづらいが、玉の重みで歪んだ台の中の上皿が、抜く配線の一部に少し引っ掛かっているように見える。

コイツか?

中の上皿を下から少し押し上げてみる。

コイツだ!と気付いた。

上皿を力いっぱい押し上げながら抜けば良い…

しかし、手が足りない…

左手は抜く為のフックをツマむ。

右手で抜く。

上皿誰が押し上げる?

肘で押そうとしたが体制的に無理であった。

ジタバタする自分がおかしくなった。

なにしてんだ僕…?

この時笑いは本物になった。

どうでも良くなって、頭で押したり、アゴで押したり色々試す。

人が来たら、いくつか考えていた言い訳は通じないなと思うと、おかしくて仕方なかった。

諦めると言う選択は、頭から消し飛んでいた。

そのうち何が良かったのかスポッと配線が抜けた。

ヨッシャー!

イケるイケる〜

プレッシャーで狂って、怖い物知らずになった僕がいた。

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