僕の作戦を聞いた時は、賢い人のような理屈を言って、反対していたリュウだったが、頑として、それで行く!と言い張る僕に折れた。
「分かった。 手伝うよ」
リュウは呆れた顔で言った。
問題は小池である。
リュウが言った理屈の中には、それが正解だなと思わせる部分が幾つもあった。
取り分が減る話しばかりだったが…
しかし小池は、僕を納得させる何の理屈も無く、ただ怖がった。
「僕が捕まっても自分で台こじ開けたって言うから。小池君の名前なんか絶対出さないよ」
「でも、防犯カメラの録画は一週間保存してあるし…」
「取り付けてから一週間やらなきゃ録画された分なんて消えるよ。それから出せば平気だろ?」
しかし小池は、失敗した時の心配ばかりをし続けた。
その通り…
小池の言う事は、全て正解であった。
僕が失敗すれば小池は間違いなくクビになる。
しかし今更怖がる奴の理屈を聞くつもりは無かった。
最後は脅しになった。
「じゃあ、やめで良いよ。でもカードも、もう卸さないよ」
欲に駆られた小池の答えは一つである。
こうして小池はまた一つ不幸の階段を上った。
開店と同時にサンゾクに入店したお客さんは数人である。
端から二列目のパ〇フルの席に付いたお客さんはゼロであった。
打ち子には入店と同時に玉抜きするように言ってある。
これにより、主任の動きを、玉抜きの列に固定させる。
小池と主任を除く店員は五人である。
お客さんが増えてくると店員は決まった列に固定するのだが、朝はテキトーな感じに人の居る列に立つ。
店員の動きは全て見切っていた。
始まりは小池が鍵を開けに来た時である。
小池が鍵を開け遠くの列にいるリュウに合図を送る。
リュウが箱を倒す。
ハーネス取り付けが始まる。
開店5分後…
小池が来ない…
あの野郎ーー!!
頭の中で何かがブチッと言った。
パ〇フルの席を立ち小池を捜す。
隣りの列に小池はいた。
「なにやってんだよ!」
押さえて凄んだ。
小池はしどろもどろで言った。
「大丈夫ですかね〜」
ここへ来て…
コイツ駄目だ…
「鍵よこせ。お前は店員だけブロックしてろ」
そう言って手を出した。
出した鍵を引ったくり更に言った。
「30秒後に取り付け始める。分かったな!」
はい、と言う小池には目もくれず、リュウの元に行き、小池がダメで鍵を受け止った事を伝えた。
リュウは笑っていた。
少し安心した。
「すぐ開けるぞ」
それだけ言って、僕はパ〇フルの席に向かった。
席に座り、鍵を回すと同時に、大きな音が遠くで聞こえた。
その音を最後に、全ての音が聞こえなくなった。
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