ハーネスを取り付けると決めた前日の昼に、サンゾクの社長と電話で話しをした。
彼は既に僕を嫌って、避けようとしている。
言葉の端々にそれを感じた。
「また警告が来たよ。もうやめた方が良いと思うけど… どう?」
そう社長が怯えた感じで言う。
「まだ大丈夫ですよ。やめたいんですか?」
「そうだね… 出来れば…」
弱気な返事である。
「変造カード仕入れたのが大分余ってるんですけど…」
社長は、ひどく慌てている。
「そ・それは、全部普通に打ち込んでくれて良いよ!」
普通にを強く強調している。
静岡が最初から三件やらせる積もりなど無かった事を、この時の僕は知っていた。
それはガンガンの部長が僕に口を滑らしていた。
潰れそうな海賊だけをやらせる積もりだったと言う。
ガンガンも、名古屋のお店も、地域で、1、2番に流行っているお店であった。
流行っていれば、変造カードなど必要ない。
打ち込まれても、お客さんが増えたのと何も変わらないのである。
それが話しの流れでガンガンに僕達が来た。
部長にすれば、ただの迷惑だったであろう。
サンゾクの社長が、最初から海賊だけだと僕に言っていれば、少しは違う形になっていただろう…
いや、変わらないかも知れない。
結局僕は、パチンコ屋を喰い潰すまでやめない。
サンゾクも海賊も、ガンガンも、最初から倒す対象だったのだ…
社長には言いたい事があったが、我慢して交渉に切り替えた。
「やめても構わないですけど、カードが余るから、二人だけ、これからも入れて良いですか? 玉抜き無しで、一日二十万円ぐらい打つのに」
「それは良いよ。いつからにする?」
助かったと言う感じがありありと出ていた。
「今週中には、やめますよ。後の二人の事は歯抜けさんに内緒ですよ」
一応、釘を指した。
「分かってるよ」
そう社長は言った。
ハーネス取り付けの朝が来た。
この日は平日である。
朝イチから店頭に並ぶ、お客さんなど土、日すらいない店である。
開店して15分ぐらい、お客さんが来ない日もあった。
この朝も、そんな匂いがプンプンした。
こりゃ楽勝だな…
僕のプッツンぶりをリュウに見せ付けてやる…
ビビらせる!
気合い充分であった…
ハーネスの取り付け自体は、パチンコ台で何度も練習した。
ハーネスは機種によって形状が違う。
1番簡単に取り付けられるのは、先に説明した大工の〇さんである。
CRフィーバー〇ワフルは形状が違い、大工の〇さんよりも多少複雑であった。
取り付けに10秒程の差がでる程度である。
本当は、大工の〇さんに取り付けたかったのだが、サンゾクでは人の目に付く自動ドアの正面に位置していた。
仕方なく手に入るハーネスと、サンゾクの機種を見渡して、CRフィーバー〇ワフルに決定した。
コメント