偽造・変造カード8

ハーネスを取り付けると決めた前日の昼に、サンゾクの社長と電話で話しをした。

彼は既に僕を嫌って、避けようとしている。

言葉の端々にそれを感じた。

「また警告が来たよ。もうやめた方が良いと思うけど… どう?」

そう社長が怯えた感じで言う。

「まだ大丈夫ですよ。やめたいんですか?」

「そうだね… 出来れば…」

弱気な返事である。

「変造カード仕入れたのが大分余ってるんですけど…」

社長は、ひどく慌てている。

「そ・それは、全部普通に打ち込んでくれて良いよ!」

普通にを強く強調している。

静岡が最初から三件やらせる積もりなど無かった事を、この時の僕は知っていた。

それはガンガンの部長が僕に口を滑らしていた。

潰れそうな海賊だけをやらせる積もりだったと言う。

ガンガンも、名古屋のお店も、地域で、1、2番に流行っているお店であった。

流行っていれば、変造カードなど必要ない。

打ち込まれても、お客さんが増えたのと何も変わらないのである。

それが話しの流れでガンガンに僕達が来た。

部長にすれば、ただの迷惑だったであろう。

サンゾクの社長が、最初から海賊だけだと僕に言っていれば、少しは違う形になっていただろう…

いや、変わらないかも知れない。

結局僕は、パチンコ屋を喰い潰すまでやめない。

サンゾクも海賊も、ガンガンも、最初から倒す対象だったのだ…

社長には言いたい事があったが、我慢して交渉に切り替えた。

「やめても構わないですけど、カードが余るから、二人だけ、これからも入れて良いですか? 玉抜き無しで、一日二十万円ぐらい打つのに」

「それは良いよ。いつからにする?」

助かったと言う感じがありありと出ていた。

「今週中には、やめますよ。後の二人の事は歯抜けさんに内緒ですよ」

一応、釘を指した。

「分かってるよ」

そう社長は言った。

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ハーネス取り付けの朝が来た。

この日は平日である。

朝イチから店頭に並ぶ、お客さんなど土、日すらいない店である。

開店して15分ぐらい、お客さんが来ない日もあった。

この朝も、そんな匂いがプンプンした。

こりゃ楽勝だな…

僕のプッツンぶりをリュウに見せ付けてやる…

ビビらせる! 

気合い充分であった…

ハーネスの取り付け自体は、パチンコ台で何度も練習した。

ハーネスは機種によって形状が違う。

1番簡単に取り付けられるのは、先に説明した大工の〇さんである。

CRフィーバー〇ワフルは形状が違い、大工の〇さんよりも多少複雑であった。

取り付けに10秒程の差がでる程度である。

本当は、大工の〇さんに取り付けたかったのだが、サンゾクでは人の目に付く自動ドアの正面に位置していた。

仕方なく手に入るハーネスと、サンゾクの機種を見渡して、CRフィーバー〇ワフルに決定した。

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