偽造・変造カード2

便所から出た僕の部長に対する感情は、怒りしか無かった。

半日ビビらされ続けた。

逆恨みなのは理解している。

それでも我慢出来ない自分がいた。

席に戻ると部長が言った。

「遅えな! 何やってんだよ!」

「クソだよ! いけねぇのか!!」

睨み合いになる。

部長の目が泳ぐ…

僕は店員を呼びコーヒーを頼んだ。

「んで、何の用?」

そう僕は聞いた。

驚く部長を黙って見ている。

部長の目付きは、頭のおかしい奴を見る目付きであった。

その時部長の携帯が震えた。

やばい…

店からだ…

電話に部長が手を伸ばす。

「話してる時に電話なんか出んなよ! なめてんのか、お前!!」

部長の目に殺意が芽生える。

電話を横に置いた。

「カード余ってるから、明日もやりたいんだけど」

そう僕は言った。

言い合いになる。

すぐに部長の電話がまた鳴った。

コイツ店に行かせない方が良いやと気付いた。

電話が切れたのを見計らい言ってみた。

「うるさいから電源切りなよ…」

気にしながらも部長は素直に従った。

部長は人として素直な人なのであろう…

それからは「明日やらせろ」や「名古屋でやらせろ」と言う僕に「駄目だ!」「すぐ帰れ!」の応酬が続いた。

その間、僕は、玉抜きがどうなっているのかだけが気になっていた。

結局僕は玉抜きを見ていない。

20分程すると僕の携帯が震えた。

部長など構わず出た。

ツルッパが言う。

「順調だぞ! 余ってたカードも皆に配った!」

力が抜けた…

「そうか」

それだけ言って電話を切った。

店員を呼んでコーヒーを頼む。

部長は騒ぎ続けている。

返事すらダルかった。

ゆっくりコーヒーを飲み終わった頃、ツルッパから電話が来た。

「デコスケ来たよ… どうする?」

不安そうに警察の登場を告げるツルッパ…

「何台?」

「一台… 二人乗ってる。あとチャリンコのお巡りも一人…」

「打ち子から余ってるカード集めて、お前は店離れろ」

「カードは多分もう無いよ…」

「多分じゃ駄目だ。一人づつ廻って確実に回収しろよ。そんでとっとと店出ろ。それと玉流せてる?」

スポンサーリンク

計量機は、玉詰まりを起こしていないと言う。

更には店長らしき男が出て来て、渋々出玉を流させていると言う。

プッツン導火線の店での失敗を見た事が役にたった。

あの店では、全員が途中で出玉を計量機に流す事無く、玉抜きを続けた。

それにより玉の循環が完全に無くなった。

修理にも長い時間が掛かった。

途中で出玉を流し流しやれば、計量機が詰まっても直すのはたやすいと思っていた。

それは東京のサンゾクで見ていた。

流し過ぎも駄目だが、流さな過ぎも駄目だと考えた。

だから玉抜きで、ひと箱貯まったら流す。

そうする事により本物のお客さんかゴト師かの区別も付けづらい。

全てが上手く運んでくれた。

ツキは僕にあったと思った。

ツルッパとの電話のやり取りを聞いていた部長が、怪訝な顔をする。

アホめ…

終わったがな…

「今日は僕達、もう帰るから…」

すぐに部長が反応する。

聞いているのもダルいので教えた。

震える顔が見たかった…

「なんかお店、警察来てるみたいよ。行った方が良いんじゃないの?」

部長は慌てて自分の携帯に飛び付いた。

電話で状況を聞いている部長の顔は、段々と青ざめていく。

僕は殴られる予感に包まれた。

失敗した…

離れてから言えば良かった…

携帯を切った部長は、立ち上がり、青い顔で僕を見て言った。

「お前…」

続く言葉が出て来ない。

仕方ないので踏ん反り返り僕は言った。

「なんだよ!」

返事は無い…

部長は僕の横をスリ抜け出口へと向かう。

「おい! コーヒー代払って行けよ。お前に奢るつもりは無い」

店を出てツルッパと合流した。

「なんか玉抜きやってたのが、はっきりバレてる奴らが、レシート換金して貰え無いって言ってる」

「ふ~ん 警察は?」

「まだ居るけど事務所の中、行ったんじゃないかな?」

換金か…

部長脅かすか…

コーヒー奢って置けば良かった…

部長に電話を掛けたら、すぐに出た。

面倒臭いので、すぐ言った。

「レシート全員の換金しろよ」

警察の対応が甘いのだろう。

少し元気になった部長が吠えた。

「ふざけんな!!」

コメント