組織犯罪の始まり40

ホールに戻ると部長はすぐに、一人の店員を指さした。

「なんかあったらアイツに言え!」

そう言ってアイツと呼ばれた店員と少し話しをして、部長は事務所へと消えていった。

この店員は全てを聞いていたのであろう…

僕を睨んでいる。

睨むな…

怖い…

構わず一般の打ち子に伝えるように、東京の打ち子に言って廻った。

この段階で僕は成功を確信した。

2時までの間に、一般の打ち子が、お客さんに疑われて二人打てなくなった。

店員へのチクりまでは到らない程の疑いである。

僕も既に打っていない。

カードがあぶれる…

しかし嬉しい誤算で、玉抜きをする、一般の打ち子が何人かいた。

カードの減りは予定通り維持されて行く。

そして2時ちょうどに携帯が震えた。

僕はホールの外にいた。

電話の通話ボタンを押す。

部長が吠えた。

「時間だぞ! 全員帰らせろよ!」

「はい。わかりました」

そう答えて、電話を切った。

それだけである。

何もせずに、ただ時間が過ぎるのを待つ。

僕の戦いが始まった。

15分もすると、また携帯が震えた。

出ない…

しつこく携帯は何度も震え続ける…

何度目かの震えで通話ボタンを押した。

部長はやっぱり怒っていた。

「すんませ~ん。あと一人五千円ぐらいで終わるんで10分ぐらいで帰れます」

僕は、ソレだけ言って、返事も待たずに電話を切った。

切る時何か言っていた。

何度か携帯が震えていたがやがて止まった。

10分過ぎて取った電話は、サンゾクの社長からだった。

「何やってるの?!」

社長は、怒りの篭った声で言った。

「はぁ? ガンガンでパチンコしてますよ…」

部長め、チクったな…

下手に出るか脅かすかで悩んだ。

「向こうの部長からやめさせてくれって電話が来たよ! 何してるんだよ!」

「何って、パチンコだっての! カード余ってんだからしょうがないでしょ!」

ここまでやっちゃってる以上、今更下手もないな…

そう思ったら言葉が強く出た。

パチンコ屋なんぞ全部が敵で結構だ…

「とりあえずやめろよ!警察呼ぶって言ってるし!」

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そう社長は言った。

「まだ千八百万分のカードが余ってるんですよ。やめられませんよ」

僕はサラっと嘘こいた。

「警察呼ばれたらどうすんの!」

呼ぶ訳ないだろ…

犯罪犯してんだから…

何、言いくるめられてんだよ…

それぐらい気付けよ…

面倒臭くなって来た。

「すぐやめるって言ってたって言っといて下さいよ。なるべく早く終わらすから」

返事も待たずに電話を切った。

2時半を過ぎた。

もう限界か?

次に部長から電話が来たら、玉抜きを開始するか悩んでいた。

カードは多分余る…

脇坂に電話を入れる事にした。

カードが余る場合、早目に教える約束をしていた。

「もしもし 僕だけど。 そろそろ限界だから玉抜きするよ。カードは多分大分余る…」

「なんでだ?」

そう脇坂は偉そうに言った。

「打ち子が足りないからだろ。40人じゃ少ねえんだよ」

すると脇坂が言う。

「遅刻してた奴らが5人来てるけど、間に合わねえか?」

もっと早く言えバカ!

とりあえず連れて来いと言った。

少しでも人数が増えるのは有り難い。

3時からの玉抜きは、30分で一人三万円出来ると予想していた。

三万円以上カードを余らせている打ち子のカードを回収するように東京の打ち子に伝えた。

カードの回収をしている間に電話が掛かって来ていた。

やかましい…

今それどころじゃ無い…

無視しか方法が思い付かない。

回収したカードは予想よりも多かった。

クソッタレ!

3時半まで引っ張るしかない…

無理か?

いや!

無理とか無い!

新しい打ち子に玉抜きのタイミングや、エラーの解除を教えてホールへ送り込んだ。

彼らは遅れた事で脇坂に脅かされている。

さらに儲けも少ない。

少しカードを多めに渡しハッパを掛けた。

「玉抜きになったら、誰に止められても、持ってるカードは全部使い切りなよ。絶対に捕まらないから。カード余らしたら君らが遅れたせいにするよ…」

その他の余ったカードは、全てツルッパに持たせるように指示をする。

準備は出来た。

しかし時間が欲しい…

あと40分…

嫌がる自分を叱咤して、部長へと電話を掛けた。

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