組織犯罪の始まり38

確認はしたが、全く信じてはいない。

ヤクザが約束守るなんて笑わせんなと思った。

ましてやケツ持ちが居ない事まで知られている。

カードが余れば確実に買い戻しの話しをされる。

失敗は出来ないと思った。

まあ失敗したら、今度は逃げたろ~とも思っていた。

このあと細かい作戦をお互いに確認して別れた。

脇坂から夜遅くになって「打ち子が揃った」と連絡が来た。

ほとんどが一般人であると言う。

失敗したら「一般人なんか連れてくるからだろ」と、ゴネる事に決めて寝た。

次の日の朝、集まった人数は40人程であった。

ゴネる材料がまた出来て気楽になった。

しかし40人とは言え、集めて見ると結構な数である。

不安はよぎるが覚悟を決めた。

死にはしない…

どうにかなるさと自分に言い聞かせた。

集まった人間が、殆ど一般人と言う事で問題はある。

女すら三人混ざっていた。

変造カードをするにあたって、どうしても避けられないのが、エラーカードである。

エラーが出たらサンドに鍵を挿して、ボタンを押して抜く。

ゴト師なら問題なく出来る。

サンゾクや海賊の時もエラーは当然出た。

しかし打ち子は、お客さんに疑われはしても、ハッキリばれた事など無い。

疑われた場合はエラーカードを抜いた後、台を移れば更に問題は無くなった。

様は簡単な事なのである。

ゴトを初めてやる時に、震える奴は沢山いる。

普段イキがっているとか、喧嘩が強いとか、死ぬ気で頑張るとかは、一切関係ない。

根が臆病なのだろう。

ゴトを始めた時、自分の本質に気付く。

先程までのイキがりは、ナリを潜める。

ただ震える…

ツルッパや歯抜けなどがそうであった。

普段なら笑いのネタなのだが、今回はその震えに付き合っている余裕は無い。

慣れるまで待てない。

前日に、何件もの鍵屋を廻って作らせた、サンド用の鍵を、一般打ち子に渡しながら説明した。

エラーカードの抜き方じたいには、みんな納得する。

「エラーが出ても慌てるな。店員は普通にしてれば絶対気付かない。ユックリした動きで鍵を捻れば問題ないから」

不安を口にする人には「捕まっても帰れるから平気だよ」と笑いながら言うようにした。

最後に言った。


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「どうしても怖かったり震えるようなら、自分で抜かないで、僕のトコかコイツらのトコに来な」

そう言って東京組の打ち子を指さす。

話しは、お金で付けてある。

横に居たツルッパは僕から離れた…

ツルッパには無理だった…

しかしツルッパには重要な仕事を任せる事が決まっていた。

脇坂にも伝えていた作戦の確認を全員にして開始の時間を待つ。

この時、既に僕の手にはお金が乗っていた。

このまま打ち子連れて東京帰ろうかな…

そう少し思った…

軽い詐欺である。

そう思ったら、どうでも良いやと思えた。

【人の痛みは、100年耐える】

【やな事からは逃げろ】

僕の座右の銘である…

最低なのか?

最低でも良かったのだが、ヤクザ絡みだし、後々面倒なので打ち込みを決行する事にした。 

僕の計算で行くと午後3時まで普通に打てれば成功であった。

その後玉抜きをすれば変造カードは使い切れる。

部長のホントの震えは、3時を過ぎてからだと思った。

少し同情する自分もいる。

しかしそれを上回る、ワクワク感は消せなかった。

午前10時の開店と共に、一般のお客さんに混ざり、打ち子達が続々とホールへと侵入して行く。

意外と呆気なく、普通にスタートをした。

僕はホールの真ん中の、カウンターの見える席に座った。

カウンターの監視と、エラーが出た場合の対処の為である。

大きな問題も無く時間が過ぎていく。

1時間を過ぎてエラー解除を頼みに来た打ち子は二人だけである。

東京の打ち子の所も同じぐらいだったであろう。

みんな、スンナリ解除してやっていた。

一般の打ち子も意外と普通な顔をして打っている。

単純にパチンコを楽しんでいるように見える。

仲間が沢山居る事と、捕まっても帰れると思っている事が、良い方に作用しているようである。

コイツらにガンガンが終わったら変造カード売れば儲かるな…

脇田に後で話そうと思った。

クソヤクザは鴨にしてやる…

二時間程経った時、カウンターに部長が出て来てコッチを見ている。

顔は既に怒りの形相であった。

気付いたな…

どうすんだい?

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