組織犯罪の始まり37

この時ツルッパも少し離れた所で青くなりながら僕達を見ていた。

数的に、自分の不利を知った若い衆は「ちょっと待て」と言って、組に電話を掛けた。

それでも僕はまだ、彼がヤクザだとは気付いていない。

「どこ電話すんだよ?」と聞くと「組だ」と言う。

ん?

何?

ヤクザ… ??

逃げるか?とも思ったが、なぜか僕は逃げなかった。

軽く考え過ぎていた。

30分もすると三台の車に沢山のヤクザが乗って、やって来た。

この段階で初めて、こりゃやべぇなと少し思った。

そして車に押し込められた。

大人しく車に乗ったのに、両脇にヤクザが座って僕が逃げられないようにしている。

左側の席の奴が、僕の脇腹にドスの短いような奴をあてがって脅かして来る。

ここで始めて事態の深刻さを悟った…

アホである。

10分程すると僕の足が、立ち上がったばかりの馬のように震えだした。

両側のヤクザに気付かれたく無くて腹に力を込めて足を力いっぱい押さえるが、震えは全く止まらない。

ヘタレである。

この時既に夜であった。

30分もすると、真っ暗な山の中の、一軒家のような家に連れ込まれた。

殺されんじゃねーの?と思った。

恐怖は最高調である。

中に入ると完全にヤクザの事務所であった。

ふらふら~っとソファーに座り込みそうになる。

「床に正座しろっ!」

怒鳴られた…

なぜか言う事を聞かずにソファーに、へたり込む僕…

完全に恐怖でおかしくなっていた。

飛び交う関西弁の恐ろしさ…

全く、明〇家さんまのような愛嬌は無い…

ここまで僕は何を言われても無視して来ている。

喋ると震え声が出てしまいそうだからである。

少しすると木刀を持ったヤクザが僕の前に立った。

脳天に向けて木刀を振り下ろして来た。

ヒョイっと首だけで除けたら肩口に強烈な痛みが走った。

ちなみに僕は剣道二段である。

不思議な事に、木刀で殴られた瞬間、恐怖は一切消えていた。

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木刀取り上げてコイツだけは◯すと思った。

この先は良く覚えていない。

興奮で目の前が真っ白になっていた。

木刀さえ奪えれば勝てると、なぜか思い込んでいた。

勝てる訳など無いのに…

数が余りにも多過ぎる。

そのあと木刀の取り合いで揉み合っていたと思う。

最初の一撃だけで、その後はどこも殴られていない。

すぐに奥の椅子に座るヤクザから声が掛かった。

「やめとけ、やめとけ」

なぜか助かった。

その後はソファーに座り普通に話しをした。

「やめとけ」と声を掛けたヤクザに「ケツ持ちは居るのか?」と聞かれた。

一瞬、妄爺やキレ爺の顔が浮かんだが「いないです」と答えていた。

大物ぶったセリフで僕を誉めている。

良い根性をしている、等と言っていた。 

大物ぶんなクソヤクザ…  

数で来やがって…

そう思う自分がいた。

それから脇田を紹介された。

何件かのホールに裏ロムを取り付けて、打ち子を沢山入れていると言う。

なぜかこの後、みんなでご飯を食べて、明け方に開放された。

送られる車の中で思った事は【僕の勝ちだ!】だけだった。

脇坂に連絡して、簡単に話しをした。

「会おう」と言う事になり、道が分からないので浜松まで来て貰った。

ファミレスで細かい作戦の話しをする。

ガンガンや海賊との繋がりや、オーナーの事には極力触れないように話した。

打ち子や、やる奴は何人でも居ると言う。

話しの中心は変造カードの値段に集中した。

僕が望んだ金額だと「高い」と言って脇坂は粘る。

六百万円分のカードを売って、僕の儲けが120万になるように言った。

50人集めるから、あと30万安くしろと言う。

50人なら上手く行けば、4、5時間で打ち込みが終わる計算であった。

カードが使い切れるなら良いのだが、使い切れずに引き取る可能性を考えると、少し安いと思った。

すると脇坂が言う。

「ヤクザの世界に引き取りなんてねえよ。売ったら売りっぱなしでいいぞ」

そりゃ助かる…

ホントだな!と確認して取引は成立した。

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