ホール内は、お客さんが増え過ぎて玉抜きを許さない状況になっていた。
仕方ない…
玉抜きはやめさせよう…
余計おかしくなる…
僕は打ち子達に、玉抜き中止を伝えた。
皆が大人しく普通に打ち始めて2時間程経った。
あれ? と思った。
店員の雰囲気が、おかしい。
誰か疑われたか?
心配になり打ち子達を見に行った。
別段怪しまれている様子は無い。
一人づつに携帯で疑われたかを聞くが、別にと答える。
でもおかしいとしか思え無かった。
とりあえず全員をホールの外に出した。
ツルッパなどは、呼び出しただけなのに、既に青い顔になっている。
お前…
情けない…
全員に聞いた。
「おかしいと思わなかった?」
「どこが?」
皆の目が、まるでヘタレを見る目であった。
こいつらー!
しかし「どこが?」と聞かれても僕にもわからん。
感覚である。
みんなが平気と言うなら仕方ない。
僕だけ疑われたのかな?
しかし目を付けられた感覚は無い。
おかしいと思っただけである。
「じゃあ気をつけて打って。おかしいと思ったらすぐやめて店出て。そんで皆に連絡して」
打ち子達はバラバラにホールへと戻る。
僕はビビッてしまったツルッパを落ち着かせる為、二人で話しをしていた。
先にホールに戻った打ち子が、すぐに全員戻って来た。
なんだ?
「変造カードの点検を、一台づつマイクで放送しながらやってます」
打ち子達が、変造カードをサンドから抜いている事を確認して、ホールへと見に行った。
二人セットの店員が、一人一人のお客さんのカードをサンドから抜いてカードの裏側を見ていた。
昨日の夜の怒りが再燃していた。
あの野郎ー!
絶対許さん!!
すぐさま店長の携帯に電話をした。
「おかけになった電話は現在電波の届か… 」と例の女が言った。
みなまで聞かずに電話を切る。
バックレか!どうしてくれようか…
冷静になろうと思ったが我慢がならん。
あんな小物店長脅しても無駄だと思った。
ガンガンのオーナーをビビらせる事に決めた。
サンゾクの社長に電話して状況を話す。
だいたいの流れを話した後に僕は言った。
「ガンガンのオーナーの電話番号教えて下さい」
しかし、ガンガンのオーナーを庇って、教えようとしない。
「だったら連絡取って下さい」
「連絡つかないんだよね…」
ふざけるな…
怒りの矛先がサンゾクの社長に向かう。
自分を押さえられなかった…
自分の手を汚さずに、金にしようとするコイツらが、大嫌いで仕方なかった。
言葉を選ぶゆとりは無かった。
「アンタね~ いい加減にしなよ。頼んで来たのアンタだろ? 話しがちゃんと付いてねーじゃねえかよ。パクられんのコッチなんだよ。おい!」
社長からの返事が無い…
黙っているので更に言う。
「変造カードだって二千万円分ぐらい余ってるのに、どうすんの? 損害は社長出してくれんの?」
サラっと嘘こいた。
サンゾクの社長は、自分が損する事に敏感だった。
「いまガンガンのオーナーに連絡して見るから」
そう慌てて言った…
連絡出来んじゃねーかよと思ったが、少し待つ事にした。
しかしもう、ダメだろうな~とは思っていた。
少しするとサンゾクの社長から電話が来た。
ガンガンのオーナーはやらせたいらしいが、部長が反対していると言う。
誰やねん?と思った。
聞けばガンガンのオーナーの甥っ子であると言う。
今後はソイツと話せと言う。
なぜ僕が??
そのまま聞いた。
「なぜ僕が?」
その後ダラダラと続く社長の言い訳にめんどくさくなり、部長の携帯番号を聞いた。
もう帰ろうかな?
たいしてお金にもならないし…
しかし変造カードが余っている。
東京に帰ったらサンゾクもやめようと思ったので、カードは使い切りたい。
仕方なく部長に電話をした。
部長はすぐに出た。
軽く挨拶をして、外へ出て来てくれるように言った。
すぐに行くと言う。
なんか怖そうな感じ…
いきなり殴られないか?と思わせる威圧感があった。
僕は正義が嫌いだ。
変造カードを打たせないと言う、部長の中には正義があった。
更には正義を振りかざす奴は、凄く苦手だった。
多分自分のゴミ野郎な部分を見せ付けられるからではなかったか?
案の定、部長は怒った顔で僕の前に立った。
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