組織犯罪の始まり32

「なんですか!」

凄んでニラまれた。

ムカッと来て、つい言った。

「ジジィ!黙って座ればいんだよ!」

しまった… と思いはしたがもう遅い。

僕の中の何かに火が付いた。

それからは全て脅し口調だったと思う。

どんだけ待たせんだ!から始まり、ボケ、コラ、カスが混ざり、最後には頼まれて来てやってんだ!まで、ひと息で言った。

すっきりした。

しかし、すっきりしている場合じゃない。

話しがすっきり終わってしまう。

大人しく座った店長に、話しの経緯を大人しく説明した。

主にオーナーに頼まれて来たと言う事を強調して伝えた。

すると店長は逆だと言う。

僕の方が頼んだから、オーナーが渋々やらせる事にしたと聞いたと言う。

これはオーナーにとってマズイ事を言ったな、とは思ったが、僕と連絡も取らないオーナーが悪い。

口裏を合わせておけばオーナーの都合良く言ってやったのに…

しかし既に遅い。

さて、どうするか?

確か僕…

ジジイって言ったな…

ボケとかカスも…

う~ん

謝っちゃお、と決めた。

「すいませ~ん 東京から出て来たばっかで疲れてるトコ長く待たされて、思っても無い事言っちゃいました~」

許さなかったら又キレる…

そしたら店長許してくれた。

「私の方も知らなかったから… 待たせ過ぎたね」

少し大物ぶった。

黙れ小者が!とは思ったが顔には出さん。

「六人で来てるんですけど… 明日から良いですかね?」

不満な顔の店長に更に言った。

「オーナーは知ってると思いますよ…」

多分ね…

知らんけど…

ならしょうがないと言う事でオッケーが出た。

ただし店員の協力は無しと頑なに断られた。

店長が帰った後、途方に暮れた。

捕まったら帰らせるだけ?

店員の協力無しじゃ一人一日二十万円がいっぱいじゃん…

短期勝負じゃなきゃまずいのに…

カード六百万円分あるんだぞ…

一人も捕まらず六百万円分打ち込むのに五日か?

随分ダルい話しになったと思った。

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聞けば店は混むと言う。

一人二十万円も怪しい…

店が混んでいるなら警察も突然は捕まえに来ないだろうが…

しかし長く打てば危険は増す。

仕方なく五日程で帰る事に決めた。

カードが全部使い切れるかが不安であった。

その日の夜、打ち子達に状況を話した。

「捕まったらお帰りだからな」

打ち子達は不満を漏らしたが仕方ない。

みんな納得した。

次の日の朝…

ガンガンの目の前に広がる光景を見て僕達は愕然とした。

ホールの表玄関から、店を半周するのでは無いかと思わせる、開店を待つ行列。

人、人、人である。

都内でも余り見かけない数であった。

大人気店である。

こりゃ玉抜きは出来ないか?

玉抜き出来なければ一人二十万円は使い切れない。

更に、これだけのお客さんが並ぶ以上、店員の数も多い。

打ち子達は、見つから無いように打つのが精一杯ではないか?

ふと後ろに立つツルッパを見てみた。

やはり完全にビビッている…

少し目がイッちゃってる感じすらある。

僕や婆さんや良夫ちゃんなら問題無く二十万円ぐらいなら使える。

しかし連れて来た打ち子達は、基本下手くそで怖がりである。

ダメだ…

打ち込む金額下げないと…

一人捕まれば、帰れるとは言え、更にやりづらくなる。

「無理すんな…」

そう言うしか僕には出来なかった。

開店と同時に僕達はホールに入った。

三分の二ぐらいの席がお客さんで埋まっただろうか。

早い段階で玉抜きをしなければならない。

これ以上お客さんが増えると、玉抜きはやりづらくなる。

とりあえず大当たりを引きたいと願うが、なかなか当たりは来なかった。

適当な店なら、当たりなど構わず玉抜きをするのだが、この店はそう言う訳に行かない。

疑われても、店を代える訳には、いかないからである。

ジリジリと増え始めるお客さんの数…

打ち子達は、ほぼ玉抜きをしないで普通に打っている。

ダメだ…

あいつらじゃあてにならん…

自分で大量にカードを使うしか無かった。

一人でアホみたいに玉抜きを開始する。

二箱抜いては流す。

そして移動。

抜いて流す。

移動…

そんな事を繰り返し12時を過ぎた。

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