「なんですか!」
凄んでニラまれた。
ムカッと来て、つい言った。
「ジジィ!黙って座ればいんだよ!」
しまった… と思いはしたがもう遅い。
僕の中の何かに火が付いた。
それからは全て脅し口調だったと思う。
どんだけ待たせんだ!から始まり、ボケ、コラ、カスが混ざり、最後には頼まれて来てやってんだ!まで、ひと息で言った。
すっきりした。
しかし、すっきりしている場合じゃない。
話しがすっきり終わってしまう。
大人しく座った店長に、話しの経緯を大人しく説明した。
主にオーナーに頼まれて来たと言う事を強調して伝えた。
すると店長は逆だと言う。
僕の方が頼んだから、オーナーが渋々やらせる事にしたと聞いたと言う。
これはオーナーにとってマズイ事を言ったな、とは思ったが、僕と連絡も取らないオーナーが悪い。
口裏を合わせておけばオーナーの都合良く言ってやったのに…
しかし既に遅い。
さて、どうするか?
確か僕…
ジジイって言ったな…
ボケとかカスも…
う~ん
謝っちゃお、と決めた。
「すいませ~ん 東京から出て来たばっかで疲れてるトコ長く待たされて、思っても無い事言っちゃいました~」
許さなかったら又キレる…
そしたら店長許してくれた。
「私の方も知らなかったから… 待たせ過ぎたね」
少し大物ぶった。
黙れ小者が!とは思ったが顔には出さん。
「六人で来てるんですけど… 明日から良いですかね?」
不満な顔の店長に更に言った。
「オーナーは知ってると思いますよ…」
多分ね…
知らんけど…
ならしょうがないと言う事でオッケーが出た。
ただし店員の協力は無しと頑なに断られた。
店長が帰った後、途方に暮れた。
捕まったら帰らせるだけ?
店員の協力無しじゃ一人一日二十万円がいっぱいじゃん…
短期勝負じゃなきゃまずいのに…
カード六百万円分あるんだぞ…
一人も捕まらず六百万円分打ち込むのに五日か?
随分ダルい話しになったと思った。
聞けば店は混むと言う。
一人二十万円も怪しい…
店が混んでいるなら警察も突然は捕まえに来ないだろうが…
しかし長く打てば危険は増す。
仕方なく五日程で帰る事に決めた。
カードが全部使い切れるかが不安であった。
その日の夜、打ち子達に状況を話した。
「捕まったらお帰りだからな」
打ち子達は不満を漏らしたが仕方ない。
みんな納得した。
次の日の朝…
ガンガンの目の前に広がる光景を見て僕達は愕然とした。
ホールの表玄関から、店を半周するのでは無いかと思わせる、開店を待つ行列。
人、人、人である。
都内でも余り見かけない数であった。
大人気店である。
こりゃ玉抜きは出来ないか?
玉抜き出来なければ一人二十万円は使い切れない。
更に、これだけのお客さんが並ぶ以上、店員の数も多い。
打ち子達は、見つから無いように打つのが精一杯ではないか?
ふと後ろに立つツルッパを見てみた。
やはり完全にビビッている…
少し目がイッちゃってる感じすらある。
僕や婆さんや良夫ちゃんなら問題無く二十万円ぐらいなら使える。
しかし連れて来た打ち子達は、基本下手くそで怖がりである。
ダメだ…
打ち込む金額下げないと…
一人捕まれば、帰れるとは言え、更にやりづらくなる。
「無理すんな…」
そう言うしか僕には出来なかった。
開店と同時に僕達はホールに入った。
三分の二ぐらいの席がお客さんで埋まっただろうか。
早い段階で玉抜きをしなければならない。
これ以上お客さんが増えると、玉抜きはやりづらくなる。
とりあえず大当たりを引きたいと願うが、なかなか当たりは来なかった。
適当な店なら、当たりなど構わず玉抜きをするのだが、この店はそう言う訳に行かない。
疑われても、店を代える訳には、いかないからである。
ジリジリと増え始めるお客さんの数…
打ち子達は、ほぼ玉抜きをしないで普通に打っている。
ダメだ…
あいつらじゃあてにならん…
自分で大量にカードを使うしか無かった。
一人でアホみたいに玉抜きを開始する。
二箱抜いては流す。
そして移動。
抜いて流す。
移動…
そんな事を繰り返し12時を過ぎた。
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