小さいながらも池があったのだから豪邸には違い無いだろう。
離婚の慰謝料として貰った家である。家を見た時はタマげた。
なぜゴト師?
しかし財産は、この家だけしか持っていない。
なぜか売る事は、かたくなに拒むと言う。
売れば数億円になるはずである。
固定資産税の為にゴトをしている。
紛れも無いイカレポンチであった。
ハツコ編 完!!
いらんか?こう言うの?
サンゾクは変わらず順調だった。
この頃には海賊の打ち込み方を真似て、店内には二人の打ち子しか入れていない。
どちらか、やりやすい方が玉抜きをする形にした。
都会で警察署を張るのは無理がある。
そこで内偵が入った時、人数が少なければ見つかりづらいと考えた。
捕まる人間も減らせる。
この形にしてからは問題が減っていた。
打ち子達は、店側に捕まらないのであれば、その先の警察の事までは深く考えていない。
しかしサンゾクは限界に近いのである。
捕まらないと言う約束が守れなくなる一歩手前まで来ている。
警察の内偵すら入っている可能性もある。
その証拠に海賊は、ひと月もたなかった。
しかし地方と都会では変造カードの使われている量が圧倒的に違う。
ただ、そこに救われているだけであろう。
既にサンゾクの社長は腰が引け始めていた。
言いくるめる限界も近い。
静岡が終わったらサンゾクも終わりにするか…
出来れば誰も捕まらせたくはない。
打ち子は捕まった場合、サンゾクとのつながりは喋りはしない。
喋る事で罪が増す。
やりやすかったからサンゾクに来たと警察に言うだろう。
しかし、サンゾク側の人間は、基本犯罪者と言う自覚がないので、捕まれば、何を言うか知れた物では無い。
サンゾクの店員達を見て思う。
コイツらが僕のクビを絞めるのは間違いない…
どんなに仲良くしていても、けして店側の人間は味方では無い…
お前達は、ただの犯罪者になれ…
僕達ゴト師は逃げ切って見せる。
表情とは裏腹に、僕はそんな事を考えていた。
みんなと別れた後にリュウに言った。
「あと10日ぐらいで終わりにしよう。もう限界だと思う」
「そうだナ。危ない思ってたヨ」
店員と打ち子にはまだ言うなと釘をさした。
危険を教えれば、辞める奴が現れる。
「お前は自分の安全だけを考えろ。ヤバくなったら誰もかばわずサッサと逃げろ」
リュウは返事もせずに、ただ笑っていた。
次の日の夕方、ツルッパと合流して、浜松へ新幹線で戻った。
組に五万円渡せば良い所を、二十万円置いて来た!と、得意げに言う。
◯クザとは実に変な生き物である。
余っていた変造カードの内、六百万分だけを残し、リュウに預けて来ている。
少し肩の荷が軽くなった。
ガンガンの店長が指定したファミレスで僕は一人待っていた。
夜9時の約束が既に9時半を回った。
連絡も来ない。
遅刻など僕は気にしない。
ゴト師など、基本ダメ人間ばかりの集まりなので、当たり前のような物である。
待ったり待たせたりは慣れていた。
一応電話してみるかと思い店長の携帯に連絡をした。
すぐに店長が出た。
「ファミレス着いてますけど何時頃になりますか?」
「あ~ 11時には行けるから」
それだけ言って電話は切れた。
は?
なに切ってんのコイツ?
そう思った。
少しカチンと来た。
オーナーに言われて、今回仕方なく、僕達と組んでやるんだなと想像出来た。
店長来たら下手で行こっと思った。
ヘソを曲げさせたら、やりづらくなる。
夜11時を30分過ぎた…
店長から連絡も無い…
普段遅刻では全く怒らない僕なのだが、先程の電話の態度の悪さもあってかイライラして来た。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせ、もう一度店長に電話をしようと通話ボタンを押した。
聞き慣れた女のガイダンスが、電波がなんたらとか言っている。
キレちゃうかもと思いながらも更に待った。
10分程すると店長らしき50代の男が、僕の席の前に立った。
「ガンガンの者だけど…」
謝る気配も無い…
「あ~ どうも…」
そう言って席を進める大人な僕…
すると店長が席にも座らず言った。
「顔は覚えましたから、明日から勝手にやって下さい。店員に捕まったら帰しますから」
それだけ言って、さっさと帰ろうとする。
は?
おい おい 待て待て…
「ちょっと座って下さいよ!」
僕は慌てて呼び掛けた。
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