組織犯罪の始まり27

従業員一同、まるで家族のような関係だったので、お店が無くなるのをとても悲しんでいた。

そこに僕達が来ると知って、みんなが喜んでいたと言う。

最後には「従業員一同全力で協力します!」と店長はペコリと頭を下げた。

どうなってんだ… これ?

良いのか?

悪いのか?

さっぱり分からなかった。

サンゾクよりは確実に玉抜きしやすいのは分かる。

しかしそれまで、一日の売上げが百万円前後だったお店に、玉抜きで百万も二百万も打ち込んだりして平気だろうか?

すぐにカード会社にバレるのでは無いか?

いくら忙しいカード会社でも、話しを付けてやっているのが確実な所は捕まえている。

ましてや海賊はタンボの中の一軒家である。

警察も内偵すらせずに突っ込んで来るのでは無いか?

目の前に、タンボを全速力で走っている自分が見えた…

打ち子は捕まらない事を条件に連れて来ている。

僕一人では決められ無かった。

「今日は取りあえず六人に十万円づつ打たせるから。店にも従業員さんにも慣れたいし」

そう店長に言った。

「もっと良いですよ」と言う店長に「こっちの都合もありますからお願いします」と断った。

そこからどうすれば安全に打ち込めるかを考え続けた。

この時一つ閃いた事があった。

夜に打ち子と話し合う事にする。

周りがどんどん捕まる中、この閃きが後にサンゾクでも、誰一人捕まらないで終われた要因になったような気がする。

打ち子を喫茶店から呼び出して、状況を軽く話し、みんなで海賊へ入った。

「玉抜きしないで普通に打ってね。今日は出した分、全部持って帰って良いから」

少し太っ腹な部分を見せた…

喜ぶ打ち子に更に言った。

「食費と交通費はそっから出してね」

どこかケチであった…

ケチちゃうわい!

こうして海賊でのゴトとは言えないゴトが始まった。

打ち始めてビックリしたのは店員の愛想の良さである。

みな笑顔だ…

少しすると打ち子全員にカップのホットコーヒーが配られた。

お客さん全員に配ってるのかと見渡せば、僕達だけにである。

やり過ぎだよ…

物凄く居心地がわるい。

しかし、敵が誰かと言う事だけは、ハッキリと認識出来た。

いつもとは違う。

直接警察とのやり取りだと思った。

何事も無く夜7時には打ち込みが終わった。


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お客さんの数は僕達を除き、常時10人以下であった。

少し気になったのは、お客さんが見慣れない僕達に話し掛けて来る事ぐらいだろうか。

今まで変造カードを打った中で、一番気楽である。

出来れば長く続けたいと、思わず願っていた。

この夜、海賊から30分程の所にあったビジネスホテルに泊まった。

僕の部屋に打ち子を集め話しをする。

「海賊で玉抜きすると、捕まる可能性が出てくるけど、どうする?」

そう僕は全員に聞いた。

なぜ捕まるのか、みんな分かっていないようであった。

彼らは、カード会社がどう言う対応をして来るのかを余り知らない。

「あんなにやりやすい店無いだろ?」

などと言っている。

カード会社の対応と、警察の動きを僕の知っている限りで話した。

考え過ぎだと、みんなが言った。

コイツら~!

僕をビビりだと思ってやがんな~!

でも… 僕の考え過ぎか?

すぐにはカード会社も対応しないのかな?とも思う。

しかし僕は自分を信じた。

人の言う事を聞いて捕まりたくは無い。

一方的に海賊でのやり方を決めた。

ホールに入るのは一人づつ、二時間で交代。

普通に打たずに完全玉抜きで、一人三十万円使い切る。

打っていない人間は、その時間、警察署の張り込み、及びホール周りの見張り。

大袈裟だと不満が漏れる。

「大袈裟じゃないよ…」

細かく説明した。

ここは東京とは違う。

お客さんのいない店に、六人も見かけない人間が毎日入り続けて、玉を両替し続ければ、必ず噂になる。

その為、ホールには一人づつ入る。

時間は掛かるがそれで一日二百万円近く打ち込める。

そのうえカード会社は必ず早い対策をしてくる。

一人が少しづつ玉抜きすれば見逃す可能性は上がる。

最悪警察が踏み込んだ場合でも、捕まる人間は一人で済む。

一人でも捕まらせたく無いから警察署の前を張る。

警察署に大きな動きがあれば、この辺ならば必ず僕達のことだから、ホールの打ち子に連絡して逃がす。

都合の良い事に太い通りからホールまでは、見通しの良い一本道であった。

パチンコ屋の駐車場から周りが全て見渡せた。

時間が掛かると不満が漏れる…

嫌な奴は、お金を渡すから帰れと僕は言おうとした。

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